2006年 01月 12日
冬の追憶No.22-9 |
「第5話 迷路」
今回の投稿は「冬の追憶No.22-8~9」の2稿に渡っています。振り返ってご覧下さい。
女性同士というのは、いったんスイッチが入ってしまうと急に打ち解けて、まるで旧知の友達のように、親しく話し合えてしまうから不思議だ。
男性の場合は、こう上手くは
いかない。すぐに話が途切れてしまう。それだけ女性は、
直感も感性も鋭く多種多様な考え方や生き方をしているからに他ならない。
響子もご多分に漏れず、すっかり由香に心を許してしまったようで、静かに語り始めた。
響子:「私、こんなこと人に話すなんて初めてなんです。どうか内密にしてくださいね。
亡くなった主人って、ドラマ作家の遠山誠という人なんです」
由香:「えーっ!あの有名な遠山誠の奥さんなの。そんな人の奥さんとお友達になれる
なんて、光栄だわ。私、彼の作品が好きでよく見ていたのよ。2年前だっけ、『記憶
の扉』が放映されたけど、よかったわ~。余韻があってとても考えさせられる作品
だったわよ。そう~、亡くなってしまたったの~。さぞかし辛かったでしょうね」
響子:「ええ、当時は悲しくて何も手に付かず、不安でどうなってしまうのか心配だったわ」
由香:「それで、アレンジメントの講師として身を立てていこうという訳ね。でも、どうして
アレンジメントフラワーなの?」
響子:「主人が薦めてくれたのです。自宅で仕事をする夫を持つ妻は大変だ。僕のこと
は気にしないでいいから。自分のことは自分で出来るから。なにか好きなことに
打ち込んで、それを職業するといいと言ってくれたのです」
響子:「作家って気難しくって、神経質な人が多いって言われているのですけれど、
遠山はとても人に気を使う心の広い人でした。私が好きな花に打ち込んで、
いきいきとしている姿を眺めているだけで、僕も幸せな気分になるからって」
響子:「その当時、私は生け花を教えていたのですけれど、これからはアレンジメントも
いいかなと興味を持ったので、勉強したのです。それが、今に繋がったんです。
彼の言うとおり、芸は身を助けるの言葉どおりですね」
響子:「娘の静香にも『女性が自立して、生きていかれる職業に付くように』って、常に
言っていました。娘は主人の影響を受けたのか、中学高校と演劇部に所属し脚本
を書いたり編集したりするのに打ち込んでいました。それで大学もテレビや映画の
制作を総合的に学べるN大学の芸術学部に進学したんです」
もずくのお吸い物 釜飯(海老・そぼろ・高菜) お新香(きゅうり・人参・
ウズラの卵・奈良漬・
赤カブ・大根)
由香:「わー。さすが、遠山誠だわ。愛妻家で家庭をとても大切にする人だったのね。
亡くなってしまったのはとても残念だけれど、益々ファンになってしまいそう。
きっと、お嬢さんの中で遠山誠氏が生きているわ。さすがカエルの子はカエルね」
響子、急にしんみりして
響子:「遠山と結婚する時、ひとつだけ約束してってお願いしたことがあるんです。
ずっと長生きして、手を取り合い仲良く生きていこうって。それなのに・・・」
響子:「私、宮城県の出身なのです。お恥ずかしいお話なのですが、私の父が事業に
失敗し大変な借金を作ってしまったのです。それまで取引のあった銀行からも
見放され、すべての家財道具にいたるまで借金のかたに取られてしまったのです。
私が大学4年生の頃の話です」
響子:「その時、事業拡大するように薦めたのが、別れた恋人のお父さんだったのです。
彼のお父さんって、大きな銀行の仙台支店に勤めていたんです。でも、父って
けっこう慎重で最初はしぶっていたのですけれど、銀行がついているから大丈夫
とあまり言うので、すっかり信用して融資に応じてしまったんです。私とその恋人が
その事実を知ったのは、この時ではなく後になってからなのですけれど」
響子:「でも、結果は散々でした。会社は倒産し、借金は山のよう。父は自分の責任だって
言って悩み、ついには自殺してしまったのです。そして母も心労で、後を追うように
して亡くなりました。残された姉と私は、従業員の人達と協力して何とか会社を立て
直そうと努力しましたが、駄目でした」
響子:「借金の後片付けに追われ、姉は婚期も逸してしまい、いまだに一人です」
デザート(メロン・黒豆の甘煮)
そこまで話した時、木村由香が口に右手の人差し指を立て、「しっーと」言う仕草をした。
それ以上、ここではしゃべらないようにという暗黙のサインだった。
由香:「千代美!明日から研修でたっぷり絞られるから、そろそろホテルに帰るわ。
さあ遠山さん、行きましょうか。千代美、悪いけど、お勘定して」
千代美が不満そうに、
千代美:「何ヶ月振りで会えたというのにもう帰るの。もっとゆっくりしていってくれれば
いいのに。でも、仕事で来ているから仕方がないわね。遊びで来た時にまた
立ち寄ってね。待っているわよ。遠山さんも、どうぞいらしてくださいね」
千代美が由香の側に寄り小声で、
千代美:「由香の顔を見られてよかったわ。お勘定だけど、お酒代は主人のサービスよ。
ふたりで、消費税込みの10,500円でいいわ」
由香 :「悪いわね。横浜に来た時は、私の家に泊まってゆっくりしていってね」
由香がカウンターの中の山下健と松井めぐみに向って笑いながら、おどけてみせた。
由香:「ご馳走さまでした。どれも、とてもおいしくって、ほっぺが落ちてしまいした。
あ、違うか。これは私の顔つきか」
店の外に出ると由香が響子に、
由香:「駄目よ。人がたくさんいる所で秘密の話をしては。特に貴女みたいに夫が
有名人の妻は気を付けなければ。亡くなったと言っても、何処で誰が聞き耳
立てていて、おもしろおかしく言われるかもしれないから。遠山さんもこれまで
とても辛かったのね。わたしだったら、大丈夫よ。話は聞くけど、口外はしない
から」
響子はあらためて木村由香の懐の深さを知った。その冷静でバイタリテイ溢れる明るさも
眩しく感じられた。
芳野 創は俳優の要 潤(かなめ じゅん)さんをイメージして、書き進めていっています。
要 潤さんに関する新情報をご紹介いたします。ご興味がありましたら、ご覧ください。
1. 「要 潤」オフィシャルサイト
1981年2月21日生まれ、現在24歳
(私の誕生日が2月23日、偶然同じ魚座です)
今、旬の若手俳優さんです。
2.要潤さんも出演されている新しいドラマが1月13日(金)
から始まります。詳細は下記をご覧ください。
「夜王~YAOH~」
2006年1月13日(金)スタート (TBS系)毎週金曜夜10時~
金曜ドラマ『夜王』にエキストラ出演していただける方を大募集しています。
ご興味のある方は下記をご覧ください。
エキストラ募集
この物語を幅広く皆様にお読みいだだけたらと思い、下記2つの「ブログランキング」サイトに登録してみました。何か心に感じることがありましたら、クリックして
いただけますと嬉しく思います。どうぞ、よろしくお願い致します。
「人気blogランキング 詩、小説部門」
今回の投稿は「冬の追憶No.22-8~9」の2稿に渡っています。振り返ってご覧下さい。
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男性の場合は、こう上手くは
いかない。すぐに話が途切れてしまう。それだけ女性は、
直感も感性も鋭く多種多様な考え方や生き方をしているからに他ならない。
響子もご多分に漏れず、すっかり由香に心を許してしまったようで、静かに語り始めた。
響子:「私、こんなこと人に話すなんて初めてなんです。どうか内密にしてくださいね。
亡くなった主人って、ドラマ作家の遠山誠という人なんです」
由香:「えーっ!あの有名な遠山誠の奥さんなの。そんな人の奥さんとお友達になれる
なんて、光栄だわ。私、彼の作品が好きでよく見ていたのよ。2年前だっけ、『記憶
の扉』が放映されたけど、よかったわ~。余韻があってとても考えさせられる作品
だったわよ。そう~、亡くなってしまたったの~。さぞかし辛かったでしょうね」
響子:「ええ、当時は悲しくて何も手に付かず、不安でどうなってしまうのか心配だったわ」
由香:「それで、アレンジメントの講師として身を立てていこうという訳ね。でも、どうして
アレンジメントフラワーなの?」
響子:「主人が薦めてくれたのです。自宅で仕事をする夫を持つ妻は大変だ。僕のこと
は気にしないでいいから。自分のことは自分で出来るから。なにか好きなことに
打ち込んで、それを職業するといいと言ってくれたのです」
響子:「作家って気難しくって、神経質な人が多いって言われているのですけれど、
遠山はとても人に気を使う心の広い人でした。私が好きな花に打ち込んで、
いきいきとしている姿を眺めているだけで、僕も幸せな気分になるからって」
響子:「その当時、私は生け花を教えていたのですけれど、これからはアレンジメントも
いいかなと興味を持ったので、勉強したのです。それが、今に繋がったんです。
彼の言うとおり、芸は身を助けるの言葉どおりですね」
響子:「娘の静香にも『女性が自立して、生きていかれる職業に付くように』って、常に
言っていました。娘は主人の影響を受けたのか、中学高校と演劇部に所属し脚本
を書いたり編集したりするのに打ち込んでいました。それで大学もテレビや映画の
制作を総合的に学べるN大学の芸術学部に進学したんです」
ウズラの卵・奈良漬・
赤カブ・大根)
由香:「わー。さすが、遠山誠だわ。愛妻家で家庭をとても大切にする人だったのね。
亡くなってしまったのはとても残念だけれど、益々ファンになってしまいそう。
きっと、お嬢さんの中で遠山誠氏が生きているわ。さすがカエルの子はカエルね」
響子、急にしんみりして
響子:「遠山と結婚する時、ひとつだけ約束してってお願いしたことがあるんです。
ずっと長生きして、手を取り合い仲良く生きていこうって。それなのに・・・」
響子:「私、宮城県の出身なのです。お恥ずかしいお話なのですが、私の父が事業に
失敗し大変な借金を作ってしまったのです。それまで取引のあった銀行からも
見放され、すべての家財道具にいたるまで借金のかたに取られてしまったのです。
私が大学4年生の頃の話です」
響子:「その時、事業拡大するように薦めたのが、別れた恋人のお父さんだったのです。
彼のお父さんって、大きな銀行の仙台支店に勤めていたんです。でも、父って
けっこう慎重で最初はしぶっていたのですけれど、銀行がついているから大丈夫
とあまり言うので、すっかり信用して融資に応じてしまったんです。私とその恋人が
その事実を知ったのは、この時ではなく後になってからなのですけれど」
響子:「でも、結果は散々でした。会社は倒産し、借金は山のよう。父は自分の責任だって
言って悩み、ついには自殺してしまったのです。そして母も心労で、後を追うように
して亡くなりました。残された姉と私は、従業員の人達と協力して何とか会社を立て
直そうと努力しましたが、駄目でした」
響子:「借金の後片付けに追われ、姉は婚期も逸してしまい、いまだに一人です」
デザート(メロン・黒豆の甘煮)
そこまで話した時、木村由香が口に右手の人差し指を立て、「しっーと」言う仕草をした。
それ以上、ここではしゃべらないようにという暗黙のサインだった。
由香:「千代美!明日から研修でたっぷり絞られるから、そろそろホテルに帰るわ。
さあ遠山さん、行きましょうか。千代美、悪いけど、お勘定して」
千代美が不満そうに、
千代美:「何ヶ月振りで会えたというのにもう帰るの。もっとゆっくりしていってくれれば
いいのに。でも、仕事で来ているから仕方がないわね。遊びで来た時にまた
立ち寄ってね。待っているわよ。遠山さんも、どうぞいらしてくださいね」
千代美が由香の側に寄り小声で、
千代美:「由香の顔を見られてよかったわ。お勘定だけど、お酒代は主人のサービスよ。
ふたりで、消費税込みの10,500円でいいわ」
由香 :「悪いわね。横浜に来た時は、私の家に泊まってゆっくりしていってね」
由香がカウンターの中の山下健と松井めぐみに向って笑いながら、おどけてみせた。
由香:「ご馳走さまでした。どれも、とてもおいしくって、ほっぺが落ちてしまいした。
あ、違うか。これは私の顔つきか」
店の外に出ると由香が響子に、
由香:「駄目よ。人がたくさんいる所で秘密の話をしては。特に貴女みたいに夫が
有名人の妻は気を付けなければ。亡くなったと言っても、何処で誰が聞き耳
立てていて、おもしろおかしく言われるかもしれないから。遠山さんもこれまで
とても辛かったのね。わたしだったら、大丈夫よ。話は聞くけど、口外はしない
から」
響子はあらためて木村由香の懐の深さを知った。その冷静でバイタリテイ溢れる明るさも
眩しく感じられた。
芳野 創は俳優の要 潤(かなめ じゅん)さんをイメージして、書き進めていっています。
要 潤さんに関する新情報をご紹介いたします。ご興味がありましたら、ご覧ください。
1. 「要 潤」オフィシャルサイト
1981年2月21日生まれ、現在24歳
(私の誕生日が2月23日、偶然同じ魚座です)
今、旬の若手俳優さんです。
2.要潤さんも出演されている新しいドラマが1月13日(金)
から始まります。詳細は下記をご覧ください。
「夜王~YAOH~」
2006年1月13日(金)スタート (TBS系)毎週金曜夜10時~
金曜ドラマ『夜王』にエキストラ出演していただける方を大募集しています。
ご興味のある方は下記をご覧ください。
エキストラ募集
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by jsby
| 2006-01-12 23:32
| 追憶 冬物語