2006年 01月 24日
冬の追憶No.22-14 |
「第5話 迷路」
今回の投稿は、「冬の追憶No.22-12~14」の2ページに渡っています。振り返って、ご覧
ください。
その頃、売店では店員が紙袋に注文の品物を詰めていた。
響子:「あの~、お会計をしていただけますでしょうか?」
店員:「少々、お持ちください。お好み焼き煎餅(12枚入り)が370円、千鳥屋のみたらし
小餅1箱(12個入)が650円、トウラクの神戸プリン(4個入り)が945円です。
そうしますと、1,965円になります。これでよろしいでしょうか?まだ他には何か
ございませんか?」
響子:「いえ、それだけでいいです」
由香:「さあ、もう9時半を過ぎたわ。そろそろ部屋に戻りましょうか」
実際は「横浜グランドインターコンチネンタルホテル」のロビーにて撮影
旧知の友のように仲良くなったふたりが、ロビーの横を通り過ぎようとした時、煙草を一服吸い終えた千尋がソファーから立ち上がった。其の時、千尋は何処かで聞いたことのあるような懐かしい声を耳にしたような気がした。
千尋は声のする方をなんとなく振り向いた。その瞬間、彼の身体は驚きのあまり硬直した。
顔も蒼白となり身体も震え出し、その場に立っているだけでもやっとだった。
千尋:「似ている。まさか・・・・・、そんな馬鹿なことが・・・・」
独り言を言いながら、あわててロビーコーナーを囲む物陰にと身を隠した。中年にはなっては
いるが、その姿はまぎれもなく響子ように思えた。彼は、いつかこういう日が訪れることを何
よりも恐れ続けてきた。
千尋:「しかし、なんでこの大阪に・・・」
ふたりの女性は、千尋に全く気が付かない様子で目の前を通り過ぎていった。そして、なに
やら楽しそうに話ながら、エスカレーターを上っていった。千尋はその後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと眺めていた。しかし彼の心臓の鼓動は早鐘を打ったかのようになり続け、身体の震
えはおさまらなかった。
彼はふたりの女性の姿が視覚から消えるのを確認すると、物陰から姿を現した。そして中央階段反対側のコーナーを抜け、フロントがある正面玄関側のロビーへと向かった。
実際は「横浜グランドインターコンチネンタルホテル」のロビーにて撮影
千尋はホテル内を足早に歩き、フロントへ着くと、
千尋:「あの~」
フロントの女性:「お客様、何か?」
千尋:「ちょっと、お調べていただきたいのですが、このホテルに遠山 響子さんという方が
お泊りではないでしょうか?」
フロントの女性:「お知り合いでしょうか?」
千尋:「いいえ、よく似た人を見かけたものですから」
フロントの女性:「少々、お待ちください。お調べしてみますので」
フロントの女性:「お泊りになってはいらっしゃいますが、これ以上はお教えできかねます。
何かお伝えになって欲しいことがあれば、ここにお名前とご住所そして
ご連絡先のお電話番号をお書きください」
千尋があわてて、
千尋:「いいえ、それには及びません。やはり私の見間違えだったようです。先方にもお伝え
なさっていただかなくて、けっこうですから」
彼は「今さら、俺は何をしようとしているのか」とはっと我に帰った。しかし、その放射線上の先で創と静香が出会ってしまっているとは予想だにしなかった。
この物語を幅広く皆様にお読みいだだけたらと思い、下記2つの「ブログランキング」サイトに登録してみました。何か心に感じることがありましたら、クリックして
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響子:「あの~、お会計をしていただけますでしょうか?」
店員:「少々、お持ちください。お好み焼き煎餅(12枚入り)が370円、千鳥屋のみたらし
小餅1箱(12個入)が650円、トウラクの神戸プリン(4個入り)が945円です。
そうしますと、1,965円になります。これでよろしいでしょうか?まだ他には何か
ございませんか?」
響子:「いえ、それだけでいいです」
由香:「さあ、もう9時半を過ぎたわ。そろそろ部屋に戻りましょうか」
旧知の友のように仲良くなったふたりが、ロビーの横を通り過ぎようとした時、煙草を一服吸い終えた千尋がソファーから立ち上がった。其の時、千尋は何処かで聞いたことのあるような懐かしい声を耳にしたような気がした。
千尋は声のする方をなんとなく振り向いた。その瞬間、彼の身体は驚きのあまり硬直した。
顔も蒼白となり身体も震え出し、その場に立っているだけでもやっとだった。
千尋:「似ている。まさか・・・・・、そんな馬鹿なことが・・・・」
独り言を言いながら、あわててロビーコーナーを囲む物陰にと身を隠した。中年にはなっては
いるが、その姿はまぎれもなく響子ように思えた。彼は、いつかこういう日が訪れることを何
よりも恐れ続けてきた。
千尋:「しかし、なんでこの大阪に・・・」
ふたりの女性は、千尋に全く気が付かない様子で目の前を通り過ぎていった。そして、なに
やら楽しそうに話ながら、エスカレーターを上っていった。千尋はその後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと眺めていた。しかし彼の心臓の鼓動は早鐘を打ったかのようになり続け、身体の震
えはおさまらなかった。
彼はふたりの女性の姿が視覚から消えるのを確認すると、物陰から姿を現した。そして中央階段反対側のコーナーを抜け、フロントがある正面玄関側のロビーへと向かった。
千尋はホテル内を足早に歩き、フロントへ着くと、
千尋:「あの~」
フロントの女性:「お客様、何か?」
千尋:「ちょっと、お調べていただきたいのですが、このホテルに遠山 響子さんという方が
お泊りではないでしょうか?」
フロントの女性:「お知り合いでしょうか?」
千尋:「いいえ、よく似た人を見かけたものですから」
フロントの女性:「少々、お待ちください。お調べしてみますので」
フロントの女性:「お泊りになってはいらっしゃいますが、これ以上はお教えできかねます。
何かお伝えになって欲しいことがあれば、ここにお名前とご住所そして
ご連絡先のお電話番号をお書きください」
千尋があわてて、
千尋:「いいえ、それには及びません。やはり私の見間違えだったようです。先方にもお伝え
なさっていただかなくて、けっこうですから」
彼は「今さら、俺は何をしようとしているのか」とはっと我に帰った。しかし、その放射線上の先で創と静香が出会ってしまっているとは予想だにしなかった。
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by jsby
| 2006-01-24 20:59
| 追憶 冬物語