2006年 04月 05日
冬の追憶No.22-36 |
皆様、こんばんは。いつも「四季のシンフォニー」をご覧いただきありがとうございます。3月18日の引越し以来、すっかり物語が滞ってしまい申し訳なく思っています。新居での生活にもようやくと慣れ、物語の方も再開できるめどが立ちました。ご覧いただいています皆様には、引き続きよろしくお願いいたします。
「第5話 迷路」
鎌倉は明るい南からの陽光を受け遠浅で温暖な海に恵まれた立地持ち、マリンレジャーも楽しめる。またこの街を囲む山々は四季折々に「春は鴇羽色(ときはいろ)や黄蘗色(きはだ)や青磁色(せいじいろ)、夏は青竹色(あおたけいろ)、秋は籐黄(とうおう)や山吹色(やまぶきいろ)、冬は白練色(しろねり色)や白銀色(しろがねいろ)」にと、その姿を変える。
「和色図鑑」
贅沢過ぎるほどの自然に恵まれ、しかも歴史・文化・芸術の中心地でもあり、適当に田舎的で適当に都会的。加え首都圏から1時間ほどで来られるほどの適度な距離。このようなさまざまな要素がジグソウパズルのように組み合わさった魅力的な街は、他にはなかなかない。
いつもは都会を闊歩する若者たちでさえも、この街に足を踏み入れただけで日頃感じているストレスをも忘れ、ゆったりとした気分になって帰っていく。そしてまた訪れてみたくなる。奥深く知的好奇心を満たしてくれる不思議な街。多くの作家や芸術家がそうであったように、ドラマ作家の遠山誠も雨漏り氏もその魅力に取り付かれ移り住んできた人々の一人だった。
鎌倉に夜の帳(とばり)が下りるのは意外と早い。夕方の5時半を過ぎると各商店は店を閉め始め、街にはいつもの静寂が訪れる。昼間、観光客で賑わう若宮大路や小町通りの喧騒が嘘のように静かだ。七里ガ浜でゆっくりと時間を過ごした千晶と静香が小町に戻ってきたのは
すでに6時近かった。
「鎌倉炭火焼きせんべい壱番屋 小町店」
帰路を急いでいたふたりが、昼間「雨漏り氏」が立ち寄った「鎌倉炭火焼きせんべい壱番屋 小町店」の前を通り過ぎようとした時、静香が思い出したかのようにその向かいにある漬物専門店「味くら(みくら)」へ立ち寄ろうとした。店の中はもうすでに人影が少なく、店主らしい男性が店を閉めようとしているところだった。
漬物専門店 「鎌倉 味くら」
静香:「あの~、まだいいで
しょうか?」
店主:「ああ、いいよ」
千晶:「静香、夕飯なら母さん
が後で、散らし寿司と
おかずと和菓子を届け
てくれから、何にもいら
ないよ」
静香:「そうじゃないのよ。千晶のお母さんにお世話になってばかりじゃ悪いからって、何か
お持たせするようにと、母さんから頼まれているの。この時間になると、開いている店
は少ないから漬物がいいかなって思って。千晶も一緒に選んでくれない。お母さん、
どんな漬物が好き?」
千晶:「静香ってよく気が付くね。『まるで小さな母さんみたい。感心な子だ』ってうちの父さん
も母さんも、そう言っていつも誉めているよ。気を使わなくてはいけないのは私の方
なのに」
静香が笑いながら、
静香:「今の言い方、千晶のお母さんそっくり。親子って、無意識のうちになんとなく似てしまう
のね」
千晶:「それじゃあね~、私の好みで言うと~、柚子大根・刻みぶな・昆布胡瓜・大なす塩漬・
赤かぶ漬あたりではどう?」
味くらの浅漬け
静香:「じゃ、それください」
店主:「まいど、ありがとうございます。あっ、ひっとしてドラマ遠山誠さんのお嬢さんでは?
生前、お父さんがよく漬物を買いに来てくれましたよ。何でも、仙台にいるお母さんに
贈るのだからって。最近はお母さんがお見えになられてますよ」
父の誠は家族にも優しいが、母親思いの息子でもあった。仕事の忙しさに追われ、なかなか帰郷できない状況が続くと、母の好きそうな特産品などを自ら選び実家に送るようにしていた。母のことを兄任せにしている、せめてもの罪滅ぼしにと考えているようだった。思わぬところで父の話を聞くことができ、静香はなんとなく嬉しそうだった。
店主:「いつもごひいきにしていただいているから、ままかり酢漬をサービスしておきますよ」
静香:「ありがとうございます」
店主が注文されたものを包んでいる傍らで、千晶はちゃっかりと漬物の試食をしている。
味くらの漬け物は、徹底的に塩分を控え、合成保存料、着色料などは極力使用していない。
しかも店内の商品は、どれも試食ができるということで鎌倉を訪れる中高年の間で評判の店だ。
とれたて湘南の気になるお店「味くら」
ふたりが遠山家に帰り着いてしばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。千晶の母は7時頃に来訪すると言っていた。それとも諸恩会後の二次会が早く終わったのだろうか。そんなことを考えながら玄関のドアを開けると、遠山家のお向かいに住む主婦の狩野貴子が、なにか
大きな荷物を両手で抱えて立っていた。
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「第5話 迷路」
鎌倉は明るい南からの陽光を受け遠浅で温暖な海に恵まれた立地持ち、マリンレジャーも楽しめる。またこの街を囲む山々は四季折々に「春は鴇羽色(ときはいろ)や黄蘗色(きはだ)や青磁色(せいじいろ)、夏は青竹色(あおたけいろ)、秋は籐黄(とうおう)や山吹色(やまぶきいろ)、冬は白練色(しろねり色)や白銀色(しろがねいろ)」にと、その姿を変える。
「和色図鑑」
贅沢過ぎるほどの自然に恵まれ、しかも歴史・文化・芸術の中心地でもあり、適当に田舎的で適当に都会的。加え首都圏から1時間ほどで来られるほどの適度な距離。このようなさまざまな要素がジグソウパズルのように組み合わさった魅力的な街は、他にはなかなかない。
鎌倉に夜の帳(とばり)が下りるのは意外と早い。夕方の5時半を過ぎると各商店は店を閉め始め、街にはいつもの静寂が訪れる。昼間、観光客で賑わう若宮大路や小町通りの喧騒が嘘のように静かだ。七里ガ浜でゆっくりと時間を過ごした千晶と静香が小町に戻ってきたのは
すでに6時近かった。
帰路を急いでいたふたりが、昼間「雨漏り氏」が立ち寄った「鎌倉炭火焼きせんべい壱番屋 小町店」の前を通り過ぎようとした時、静香が思い出したかのようにその向かいにある漬物専門店「味くら(みくら)」へ立ち寄ろうとした。店の中はもうすでに人影が少なく、店主らしい男性が店を閉めようとしているところだった。
漬物専門店 「鎌倉 味くら」
静香:「あの~、まだいいで
しょうか?」
店主:「ああ、いいよ」
千晶:「静香、夕飯なら母さん
が後で、散らし寿司と
おかずと和菓子を届け
てくれから、何にもいら
ないよ」
静香:「そうじゃないのよ。千晶のお母さんにお世話になってばかりじゃ悪いからって、何か
お持たせするようにと、母さんから頼まれているの。この時間になると、開いている店
は少ないから漬物がいいかなって思って。千晶も一緒に選んでくれない。お母さん、
どんな漬物が好き?」
千晶:「静香ってよく気が付くね。『まるで小さな母さんみたい。感心な子だ』ってうちの父さん
も母さんも、そう言っていつも誉めているよ。気を使わなくてはいけないのは私の方
なのに」
静香が笑いながら、
静香:「今の言い方、千晶のお母さんそっくり。親子って、無意識のうちになんとなく似てしまう
のね」
千晶:「それじゃあね~、私の好みで言うと~、柚子大根・刻みぶな・昆布胡瓜・大なす塩漬・
赤かぶ漬あたりではどう?」
味くらの浅漬け
静香:「じゃ、それください」
店主:「まいど、ありがとうございます。あっ、ひっとしてドラマ遠山誠さんのお嬢さんでは?
生前、お父さんがよく漬物を買いに来てくれましたよ。何でも、仙台にいるお母さんに
贈るのだからって。最近はお母さんがお見えになられてますよ」
父の誠は家族にも優しいが、母親思いの息子でもあった。仕事の忙しさに追われ、なかなか帰郷できない状況が続くと、母の好きそうな特産品などを自ら選び実家に送るようにしていた。母のことを兄任せにしている、せめてもの罪滅ぼしにと考えているようだった。思わぬところで父の話を聞くことができ、静香はなんとなく嬉しそうだった。
店主:「いつもごひいきにしていただいているから、ままかり酢漬をサービスしておきますよ」
静香:「ありがとうございます」
店主が注文されたものを包んでいる傍らで、千晶はちゃっかりと漬物の試食をしている。
味くらの漬け物は、徹底的に塩分を控え、合成保存料、着色料などは極力使用していない。
しかも店内の商品は、どれも試食ができるということで鎌倉を訪れる中高年の間で評判の店だ。
とれたて湘南の気になるお店「味くら」
ふたりが遠山家に帰り着いてしばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。千晶の母は7時頃に来訪すると言っていた。それとも諸恩会後の二次会が早く終わったのだろうか。そんなことを考えながら玄関のドアを開けると、遠山家のお向かいに住む主婦の狩野貴子が、なにか
大きな荷物を両手で抱えて立っていた。
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by jsby
| 2006-04-05 21:41
| 追憶 冬物語