2007年 06月 18日
冬の追憶No.24-22 |
「第7話 若しも・・・」
突然のアクシデントで、いつもご覧いただいている皆様には、ご心配をお掛けし申し訳なく
思います。全頁ではありませんが、4ページ分のみファイルを作り変えることができました。
不思議な女性の予言の部分は、数日中に更新できるようにファイルを再生いたしますので。
今回の投稿は「冬の追憶No.24-21~22」の2稿に渡っています。振り返ってご覧ください。
しばらくすると、ジミーが桜アンパンとカレーパンそれに日本茶のペットボトルを手に戻って
来た。ケイデンに少しでも日本らしい物を味あわせてあげたいという、彼なりの心遣いが感
じられた。
ジミー :「桜アンパンというのは、イースト菌の代わりに、日本酒を作る時の米酵母と酒種を使って作られて
いるんだって。真ん中の窪みにトッピングされているのは、桜の塩漬けだそうだ」
ケイデン:「お前、何でも知っているんだなあ」
ジミー :「いや、違うよ。今、ちょっと前に店の女の子から教えてもらったにわか知識だよ。お試しに食べてみろよ」
幼い子供たちを連れた隣席の若い夫婦を見て何かを感じたのか、彼の買って来てくれた
桜アンパンを口に含みながら、ケイデンがいつになくしんみりした調子で語り始めた。
ケイデン:「ジミー、俺の生い立ちのこと知っているよな。赤ん坊の時に誘拐されて捨てられ
たってこと?」
ジミー :「ああ、何となく聞いて知っているよ。でも、お前は本当に幸運だったよな。ジョン
ソン牧師夫妻のような立派な人に育てられて。それに、血は繋がっていないけど、
兄弟もいるし」
ケイデン:「うん、まあ~。ジミーはハンス・クリスチャン・アンデルセンが書いた『みにくい
アヒルの子』という童話を読んだことあるか?」
ある有名なお寺の池に住むアヒルを撮影
ジミー :「ああ、子供の頃に読んだことあるよ。アヒルの群れの中で生まれた雛の中で
一羽だけ灰色の羽の雛がいた。他の雛は黄色くて可愛いいのに、その雛は身体も
大きくって可愛らしくない。他のアヒルの子と似ていないからという理由でいじめら
れて逃げ出してしまう話だよね」
ジミーに続き、ケイデンが続けた。
ケイデン:「逃げ出したものの、他の所でも醜いといじめられながらひと冬を過ごす。やがて
疲れ切ったひな鳥は白鳥の住む池に辿り着く。いつの間にか、大人の鳥になっ
ていたひな鳥はそこで初めて、自分はアヒルではなくって美しい白鳥であった事
に気付くという物語」
皇居のお濠の白鳥を撮影
ジミー :「みにくいアヒルの子の話とお前の生い立ちと何か関係があるのか」
ケイデン:「俺が5歳ぐらいになった頃かな。ママに聞いたことがあったんだ。『兄さんや
姉さんの肌は白いのに、どうして僕は黄色いの?皆は目が青いのに、どうして
僕は黒いの?皆の髪の色は金色なのに、どうして僕だけ黒いの?』って」
ケイデン:「そしたら、ママは『貴方も大人になったら、皆と同じように肌も白く、目の色も青く、
髪の色も金色になるわよ。楽しみにしているといいわ』そう言いながら、僕をギュ
ーウと抱きしめ頭を撫ぜてくれた」
ケイデン:「でも、ママの目は涙で潤んでいた。その時、僕の質問はママを悲しませることな
んだとわかったんだ」
ケイデン:「俺は初めて日本に来てみて、同じような顔立ちの人に会ったり、日本語で話した
りするだけで、何故か気持ちが落ち着くんだ。自分の中のDNAは日本人だと言う
ことがわかったんだ。でも、俺には系図の樹がない。だから、何処にソケットを射し
込んだらいいのか、俺は両親のどちらに似ているのか、兄弟がいるのか、本当の
誕生日はいつなのか、本当の名前は何て言うのか。なにひとつ手がかりがない。
それがとても寂しい」
ケイデン:「だから、さっき鳩居堂で知らないおばさんから『芳野ちゃんの創ちゃん』でしょうって声を掛けられた時には、正直言ってびっくりしたけど、とても嬉しかったんだ」
ジミー :「系図の樹か・・・」
ケイデンの話を聞きながら、ジミーは嬰児誘拐がその子の人生にどんなに大きな影響を与えるのかを目の当たりにし、彼がこれまで心の奥に仕舞いこんでいた悲しみが分かったような気がした。
サイトに登録してみました。何か心に感じることがありましたら、クリックして
いただけますと嬉しく思います。またご意見・ご感想などを、ご気軽にコメント
していただけますと、励みにもなります。どうぞよろしくお願い致します。
「人気blogランキング 詩、小説部門」
突然のアクシデントで、いつもご覧いただいている皆様には、ご心配をお掛けし申し訳なく
思います。全頁ではありませんが、4ページ分のみファイルを作り変えることができました。
不思議な女性の予言の部分は、数日中に更新できるようにファイルを再生いたしますので。
今回の投稿は「冬の追憶No.24-21~22」の2稿に渡っています。振り返ってご覧ください。
しばらくすると、ジミーが桜アンパンとカレーパンそれに日本茶のペットボトルを手に戻って
来た。ケイデンに少しでも日本らしい物を味あわせてあげたいという、彼なりの心遣いが感
じられた。
ジミー :「桜アンパンというのは、イースト菌の代わりに、日本酒を作る時の米酵母と酒種を使って作られて
いるんだって。真ん中の窪みにトッピングされているのは、桜の塩漬けだそうだ」
ケイデン:「お前、何でも知っているんだなあ」
ジミー :「いや、違うよ。今、ちょっと前に店の女の子から教えてもらったにわか知識だよ。お試しに食べてみろよ」
幼い子供たちを連れた隣席の若い夫婦を見て何かを感じたのか、彼の買って来てくれた
桜アンパンを口に含みながら、ケイデンがいつになくしんみりした調子で語り始めた。
ケイデン:「ジミー、俺の生い立ちのこと知っているよな。赤ん坊の時に誘拐されて捨てられ
たってこと?」
ジミー :「ああ、何となく聞いて知っているよ。でも、お前は本当に幸運だったよな。ジョン
ソン牧師夫妻のような立派な人に育てられて。それに、血は繋がっていないけど、
兄弟もいるし」
ケイデン:「うん、まあ~。ジミーはハンス・クリスチャン・アンデルセンが書いた『みにくい
アヒルの子』という童話を読んだことあるか?」
ジミー :「ああ、子供の頃に読んだことあるよ。アヒルの群れの中で生まれた雛の中で
一羽だけ灰色の羽の雛がいた。他の雛は黄色くて可愛いいのに、その雛は身体も
大きくって可愛らしくない。他のアヒルの子と似ていないからという理由でいじめら
れて逃げ出してしまう話だよね」
ジミーに続き、ケイデンが続けた。
ケイデン:「逃げ出したものの、他の所でも醜いといじめられながらひと冬を過ごす。やがて
疲れ切ったひな鳥は白鳥の住む池に辿り着く。いつの間にか、大人の鳥になっ
ていたひな鳥はそこで初めて、自分はアヒルではなくって美しい白鳥であった事
に気付くという物語」
ジミー :「みにくいアヒルの子の話とお前の生い立ちと何か関係があるのか」
ケイデン:「俺が5歳ぐらいになった頃かな。ママに聞いたことがあったんだ。『兄さんや
姉さんの肌は白いのに、どうして僕は黄色いの?皆は目が青いのに、どうして
僕は黒いの?皆の髪の色は金色なのに、どうして僕だけ黒いの?』って」
ケイデン:「そしたら、ママは『貴方も大人になったら、皆と同じように肌も白く、目の色も青く、
髪の色も金色になるわよ。楽しみにしているといいわ』そう言いながら、僕をギュ
ーウと抱きしめ頭を撫ぜてくれた」
ケイデン:「でも、ママの目は涙で潤んでいた。その時、僕の質問はママを悲しませることな
んだとわかったんだ」
ケイデン:「俺は初めて日本に来てみて、同じような顔立ちの人に会ったり、日本語で話した
りするだけで、何故か気持ちが落ち着くんだ。自分の中のDNAは日本人だと言う
ことがわかったんだ。でも、俺には系図の樹がない。だから、何処にソケットを射し
込んだらいいのか、俺は両親のどちらに似ているのか、兄弟がいるのか、本当の
誕生日はいつなのか、本当の名前は何て言うのか。なにひとつ手がかりがない。
それがとても寂しい」
ケイデン:「だから、さっき鳩居堂で知らないおばさんから『芳野ちゃんの創ちゃん』でしょうって声を掛けられた時には、正直言ってびっくりしたけど、とても嬉しかったんだ」
ジミー :「系図の樹か・・・」
ケイデンの話を聞きながら、ジミーは嬰児誘拐がその子の人生にどんなに大きな影響を与えるのかを目の当たりにし、彼がこれまで心の奥に仕舞いこんでいた悲しみが分かったような気がした。
サイトに登録してみました。何か心に感じることがありましたら、クリックして
いただけますと嬉しく思います。またご意見・ご感想などを、ご気軽にコメント
していただけますと、励みにもなります。どうぞよろしくお願い致します。
「人気blogランキング 詩、小説部門」
by jsby
| 2007-06-18 19:01
| 追憶 冬物語