四季のシンフォニー
2008-01-02T15:54:11+09:00
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四季を通して撮影した写真を挿絵がわりに使い、メロ・サスペンスストーリを創作しています。
Excite Blog
2008年新年のご挨拶
http://jsby.exblog.jp/7888158/
2008-01-02T15:51:00+09:00
2008-01-02T15:54:11+09:00
2008-01-02T15:51:18+09:00
jsby
追憶 冬物語
皆様のところにたくさんの幸せが訪れますように・・・
Jsby家より愛をこめて
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「あらら、あれは・・・」
http://jsby.exblog.jp/7858855/
2007-12-30T00:33:00+09:00
2007-12-30T00:36:03+09:00
2007-12-30T00:33:36+09:00
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追憶 冬物語
皆さんはこれ、何の鳥の巣だとお思いになりますか?大きさは直径6~7センチぐらい、深さは5~6センチぐらいでしょうか。勿論、巣の中はからっぽです。
主人と「あの鳥かしら、この鳥かしら」と我が家に日参して来る鳥の名を上げてみました。巣の大きさからいって、主人はシジュウカラ、そして私はメジロということに。ネットで検索してみると、正解はメジロでした。
二階のベランダから観察してみると、材料はシュロのような繊維で均一に編みこまれ、巣底にはクッションがわりでしょうかコケが敷かれているようです。白く見えるのは、何と蜘蛛の糸でした。巣を固定したり、補強したり、ひものかわりに使ったようです。その出来栄えの見事さに感心してしまいました。
そう言えば8月の中旬、ウッドデッキに置いている植木の水遣りをしていると、突然に鶯色したひな鳥がよろよろと飛んで来たではありませんか。下記がその時の写真です。
近くでは、メジロの若い夫婦が「チーチュル、チーチュルルル」とひなに呼び掛けています。
まるで「そっちに行っては駄目よ。早く戻ってらっしゃい」とでも言っているようです。可哀想なので、そっと庭のヒイラギの小枝に止まらせてあげました。
メジロは雄・雌が協力して子育てをするそうです。新米ママとパパらしきメジロの夫婦は、抱卵から子育ててすっかりやせ細っています。庭のフェンスのところで、お互いの羽繕いをし合っている様子を撮影したのが下記の写真です。遠景なので、少しピンボケしています。涙ぐましいですね。その時のメジロのツガイがイロハ紅葉の木の枝に巣を作ったのだと結びつきました。
今年の夏は猛暑でした。野鳥達も生きていくのは大変です、下記はバードバスに水を飲みに来た野バトと水浴びが大好きなシジュウカラの写真です。
最近、面白いことに気が付きました。我が家の冬の庭に日参してくる野鳥達の餌ですが、
シジュカラはヒマワリの種、メジロやヒヨドリはミカン・リンゴ・カキを好んで食べています。
スズメも時々、来るのですが、彼ら用の餌は特に用意していません。
彼らは雑食で何でも食べるようです。観察していると、シジュウカラがヒマワリの種を割って
食べるのをみて、真似をし始めたのです。下記は、シジュウカラがヒマワリの種を足の間に
挟んで、種を割る様子を撮影したものです。しかし、スズメのクチバシは固いヒマワリの種を
割るのには適していないのか、諦めてしまったようです。
次に彼らが着目したのがメジロの餌でした。何とスズメ達はメジロがミカンをついばんでいるのを見て、これなら食べられるのではと、真似をし始めたのです。クチバシや舌の長いメジロほど上手くは食べられませんが、美味しそうに食べています。
このように家でくつろいでいる時は、野鳥の様子を観察しながら過ごしています。天敵の蛇・猫・カラスなどがいないので、比較的安全な場所だと思っているのでしょう。元気に生き延びていって欲しいものです。
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冬の追憶No.25-11
http://jsby.exblog.jp/7823360/
2007-12-25T18:54:00+09:00
2007-12-25T19:08:08+09:00
2007-12-25T18:54:29+09:00
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追憶 冬物語
「第8話 綻び(ほころび)」
しばらくの間、ふたりは見えない影をも飲み込んでしまいそうな赤い海を見詰めていた。
彼は、この話題から彼女を連れ出したかった。
わざとおどけた声で『そうだ!石の城を造った記念に写真を撮っておこう』と言い出した。散歩
にでも来たのだろう。ちょうど、ひとりの中年男性がふたりの傍を通りかかった。彼はその男性に駆け寄りカメラを渡すと、シャッターを押してくれるように頼んだ。その男性は快く引き受けて
くれた。
そしてカメラのファインダーを覗きながら『お嬢さん、そんなに緊張しないで。そうだなあ、彼の
方は彼女の肩に手を掛けて。そうそう、その調子。それにしても、君達、お似合いだね。僕はこれまで何組ものカップルの仲人を頼まれたことがあるけど、幸せになるカップルは何となく
わかるんだ』とにこやかに笑いかけた。
数枚の写真を撮り終え、男性が創にカメラを手渡そうとした時、真っ青な顔をしたふたりの若い女性連れと小さな女の子が、なにやら叫びながら彼らの方へ駆け寄ってきた。母親同士で
子供を連れて海辺へと遊びに来たらしい。背の高い方の女性は海の方を指さしながら、「お願い!子供を、子供を助けて!」、と気も狂わんばかりに泣きじゃくっている。ボールを追いかけ
て海に入り、溺れてしまったとのことだった。
その女性の指差す方向を見ると、幼い男の子がビーチボールほどの大きさのボールにやっとの思いでつかまりながら、波間の中で漂っている。春とはいえ、夕方の海は寒い。一刻を争う。創は静香にカメラと自分のジャケットを渡し、写真を撮ってくれた男性に、警察と救急車の手配をしてくれるようにと言い終えると、海に飛び込みその男の子の方に向かって泳いでいった。
静香は彼のジャケットをぎゅっと抱きかかえながら、『創さん、創さん、無事に、必ず、必ず、
戻ってきて』何度も、何度も、叫んだ。父が幼い兄を助けようとした時も、こうだったのだろう。
身体が震え、顔を覆ったままその場に座りこんでしまった。
しばらくして、心配した男性が静香の肩をたたいた。『ほら、見てごらん。彼、坊やを助けて戻ってくるところだよ。本当に勇敢な青年だ。きっとこれから先、君のことも守ってくれるに違いないよ。君は彼のことを愛しているんだね』
すでに警察と救急車が到着し、浜辺は騒然とした雰囲気に包まれた。小さな男の子を抱きかかえた創が戻ってきた。浜辺に駆けつけた人々の中から彼の勇気をたたえる拍手が沸き起こった。彼は救急隊員に男の子を手渡すと、溢れる涙で一杯になっている静香の方へ歩み寄った。そして「俺、君のお父さんに認めてもらえるかな」とぽつりと漏らした。
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冬の追憶No.25-10
http://jsby.exblog.jp/7823149/
2007-12-25T18:26:00+09:00
2007-12-25T18:26:56+09:00
2007-12-25T18:26:08+09:00
jsby
追憶 冬物語
芳野創と亡くなった兄とは異母兄弟ではないかと予想はしていたものの、改めてそう結論
付けられるのは、静香にとっても複雑な気持ちだった。
静香:「それを誰から?小林秀雄さんに会われたのですか?」
創 :「いゃ、僕は彼に会っていない」
『じゃあ、何故?』とでも言いたげな静香の視線を横目に感じながら、
創 :「実は、今回のことを調べてもらうのに先輩記者の鈴木美沙という女性に頼んだんだ。
勿論、信頼のおける人だから心配はいらない。彼女は小林秀雄さんに会って話を聞
いてくれたのだけど、はっきりしたことはわからなかった」
創 :「それで、彼に大学時代に君のお母さんと親しかった女性の友人がいなかったどうか
を尋ねてみた。通常、こういうことに男性はうといし、無関心だと思ったからだと言って
いた」
創 :「そしたら水城綾乃さん、今は結婚して山田綾乃さんという姓になっている女性がいた
ことを思い出してくれたのだ。君のお母さんとは大学の演劇サークル時代の友人だ
そうだ。で、その人にも会って話を聞いてくれた」
静香:「それで母の友人は何と?」
創 :「ずっと昔、そう・・・君が生まれる前のことだけど、その女性が君のお母さんに『作の
本当の父親は芳野千尋ではないか』と電話で聞いたことがあったそうだ。きっかけ
となったのは、君のお父さんが書かれた本だった。彼女もその本を読んで、もしかし
たらという想いを抱いたそうだ」
そう言いながら、彼は自分のバッグの中から『赤い海』を取り出した。
静香:「あら!この本を何処で?私、芳野さんにこの本のことはお話していなかった
のに・・・」
創 :「先輩が君のお父さんのことを調べていくうちにこの本の存在を知り、知人の編集者
を通じて取り寄せてくれたのさ」
静香:「それで母は、その友人に何と答えたのですか?」
創 :「やはり、作という子は僕の父との間に出来た子供だと答えたそうだ。そして、あの本
は君のお父さんが僕の父に向けて書いたものだとも言っていた。そのために、冊数
限定でめだたない二流の出版社から自費出版したらしい」
創 :「もしかしたら、作のことで君のお父さんと僕の父との間で、何か特別の約束を取り
交わしていたのかもしれない」
静香:「それは・・・、それは、どんな約束?」
創 :「この本を読んだ限りでは、そのことに関する記述はない。だから、僕にも全く予測
がつかないけど。当事者同士にしかわからないことだと思う」
静香:「それで、芳野さんのお父さんはこの本を読まれたのでしょうか?」
創 :「いゃ、読んでないと思う。読んでいたとしたら、君のお父さんと何らかの形で連絡を
取り合っていたのではないかと思う。」
静香:「でも、どうして私の母と芳野さんのお父さんは別れてしまったのかしら?愛情が
冷めてしまったから?それとも、お互いの両親にでも結婚を反対されたから?
でも、結婚できないとわかっているのに、何故、母は兄を産んだのかしら?愛、
執着、ああ~、母の気持ちが理解できないわ」
彼は「それは・・・」と言いかけて、黙り込んでしまった。お互いの親同士の別れの原因に自分の祖父が関与していると思われるからだ。今、不用意な発言をして彼女の心を傷つけたくなかった。
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冬の追憶No.25-9
http://jsby.exblog.jp/7577889/
2007-11-29T22:29:00+09:00
2007-11-29T22:31:14+09:00
2007-11-29T22:29:31+09:00
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追憶 冬物語
『赤い海を・・・赤い海を見に行かないか』創の唐突な誘いに、静香は面食らった。彼の
脳裏に、『あと一歩、あと一歩と、築いた夢の城が荒波にさらわれ、無残に崩れ去っていく
様に苦悩する若き父の姿』が浮かんだ。
守りたいものが出来た時、人は臆病にも勇敢にもなる。彼は頭(かぶり)をゆすり、悪夢の
再演を追い払らおうとした。俺は大切に想う人から笑顔を奪うようなことはしない。例えそれ
が、周囲の人々を悲しませることになろうとも・・・。
静香:「どうかされたのですか?何かあったのですか?赤い海って・・・何処の海のこと
をおっしゃっているのですか?」
創 :「ゴメン。何でもないんだ。訳のわからないことを言い出したりして。心配させてしまっ
たようだね。先週、友人が由比ガ浜の夕陽を見に行って奇麗だった、と言っていた
のを思い出したものだから、行ってみたいと思って」
静香は『何故、彼が突然に由比ガ浜の夕陽を見たい』と言い出したのか、あれこれと思いを
めぐらした。彼らの鎌倉行きは静香が自宅に戻る日曜日の午後にすることとなった。創から
の電話が切れた後、背後から誰かに見詰められているような気がした。
ふと振り返ると、母が伯母に贈った三人官女と目が合った。伯母の裕子が『これはとっても
縁起のいいお人形なのよ。26年間もずっとさ迷い続けながら、私たちの元に戻ってきてくれ
たのだから。きっと、静香ちゃんのことも守ってくれるに違いないわ』と、彼女のためにと用意
した部屋に飾ってくれたのだった。
母も伯母も、その雛人形を取り戻すきっかけを作ってくれたのが創の母だと気が付いていない。人形の表情は静かで穏やかではあるが、何かを訴えかけてくるような強い意志が感じられるような気がしてならなかった。
創との約束の日、しとしとと降り続いた雨が上がり、春らしい陽射しに満ち溢れた日になった。響子は1週間振りに帰宅した娘と買い物にでも出掛けようと楽しみにしていたのに、と残念がった。何となく心苦しかったが、『赤い海を見に行かないか』という創の言葉が気になって仕方がなかった。
何か自分に話したいことがあるのではと期待していたのに、彼は由比ガ浜に着くなり、城を作ろうと言い出した。それも波に壊されないように石の城を作ろうと言う。それも出来るだけ大きくって重い石を集めて。最初は、子供じみた遊びと思っていたが、いつしか静香も夢中になっていた。
城の周りには城壁も作ろうと言いながら、創が大きな石を幾つも運んできた。やがて、太陽が西に傾き空が赤紅に染まり始めた頃、石の城が完成した。満潮の時を向かえ、寄せては返す波が砂浜に押し寄せた。しかし、彼らが作った城は壊れなかった。
ふたりは自分達が築いた城の出来栄えに、童心に返ったように手を取り合って喜び合った。
赤く染まった海を見詰めながら、創が呟いた。『君のお兄さんは、僕の兄でもあったということ
がわかったよ。でも、君と僕が兄弟でなくてよかった』やはりそうだったのだ。彼はそれを告げ
るために、兄が亡くなった赤い海を選んだのだ。
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冬の追憶No.25-8
http://jsby.exblog.jp/7441780/
2007-11-15T18:26:00+09:00
2007-11-16T06:21:51+09:00
2007-11-15T18:26:45+09:00
jsby
追憶 冬物語
その夜、創は美沙から渡された封筒を開ける決心がなかなかつかないでいた。いつでも
スタンバイオーケーなようにカセットレコーダーも用意してあるのだが。以前、君島編集長
から遠山誠のインタビュー資料を貸してもらった時はこうではなかった。思わぬことで見つ
けた静香との接点に、はやる心を抑えられないでいたのに。
嫌なことや不安なことを後回しにしてしまいたいのは彼に限ったことではない。それを知って
しまった時の自分の心の動揺が怖いのだ。彼は「シャワーを浴びてから」「食事をしてから」
「カメラの手入れをしてから」と次々と自分に口実を与えていった。
しかし、そんな彼の背中を押すように美沙の声が耳元で囁く。『ふたりが出逢わなければ、
真実に触れることもなかったでしょうに。だけど、すでに芳野は運命の糸の片方を手繰り
寄せてしまっているのよ。そしてもう一方の糸は静香さんが・・・』
『神様がふたりを巡り会わせたのには何かそれなりの意図があるのかも。この際、芳野と
静香さんがどんな絆で結ばれているのか見届けようじゃないの。運命の赤い糸の先にきっ
と隠された真実が見えてくる筈よ。』
『そして綻びが見つかったら、ふたりで繕えばいいじゃないの。どちらかが針になったり糸に
なったりして。だから怖がったり不安がったりすることなんてないわ。また助けが必要になっ
たら、いつでも私を呼んで。乗りかかった船だから。』
2缶目のビールを開けたところで、やっと決心がついた。若し彼女が真実を知ったら自分から離れて行ってしまうことを恐れているのではないか。美沙が録音してくれたテープが流れ始めた。不思議な感情が心を満たしていった。自分だったら、到底ここまでは食い下がれなかっただろう。あらためて美沙に感謝したい想いで一杯だった。
まるでドラマの中の世界にでも紛れ込んだようだ。特に山田綾乃が語るフレーズに差し掛かると、テープが擦り切れるのではないかと思うほど、繰り返し入念に聞き入った。込み上げるものがあった。こんなことが実際にあったなんて、とても信じられなかった。その残酷とも思える出来事が若き日の父と静香の母の身に降りかかったのだ。
しかし、何事もなく彼らが結ばれていたのなら、自分も彼女もここに存在していなかったのだ。会ったこともない異母兄弟への想いが募った。以前、カナルカフェで静香が見せてくれた小さ
な男の子の写真が脳裏に浮かんだ。
テープを聞き終わると、引き込まれるように遠山誠のエッセイ『赤い海』を手に取った。美沙もテープの中で感想を述べているように『若しも・・・神様が消しゴムを使える権利を1度でも与えてくれるのなら、消してしまいたいことがある。しかし、空白となったところをどう書き直そうとも決して元のように蘇ることはない。かえって、傷口が広がるだけだ』という書き出しに誠の苦悩が感じられた。
その時、創の携帯が鳴った。静香からだった。
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冬の追憶No.25-7
http://jsby.exblog.jp/7295521/
2007-10-30T21:57:00+09:00
2007-10-30T23:21:57+09:00
2007-10-30T21:57:32+09:00
jsby
追憶 冬物語
今回の投稿は「冬の追憶No.25-6~7」の2稿に渡っています。振り返ってご覧ください。
『EMPORIUM(エンポリアム)』はロイヤルパーク汐留タワーの1階にある。美沙達が働いている雑誌社が入居している汐留シティセンタービルのすぐ近くにあるビル。創が『エンボリアム』に着いてしばらくすると美沙が入ってきた。彼女はコーヒーを注文し終わると、すぐに本題に入った。
レストラン、カフェ/『EMPORIUM(エンポリアム)』
美沙:「まずは、これが今回のことでかかった取材費。いつでもいいわ。会って話しを
聞いたのは芳野のお父さんの学友の小林秀雄さんと遠山静香さんのお母さん
の学友の山田綾乃さん。山田さんの大学時代の苗字は水城、静香さんのお母
さんとは演劇サークルで一緒だったそうよ。小林さんが紹介してくれたわ」
美沙:「結論から言うと、遠山静香さんの亡くなったお兄さんの作ちゃんは、芳野の
お父さんと響子さんとの間に出来たお子さんだったわ。山田綾乃さんが静香
さんのお母さんから聞いた話だから、間違いないと思うわ」
やはりそうだったのかと創は静かに頷いた。彼女は創の反応を確認しながら、慎重に言葉を
選んでいるようだった。
そして姿勢を正すと改まった調子になり、
美沙:「詳しい話をする前に芳野の彼女に対する気持ちを確認しておきたいのだけれど」
創 :「気持ちって?」
美沙:「気持ちというより間柄と言った方がいいかな。単なる大学の後輩で妹みたいな
存在なのか、ガールフレンド止まりなのか、あるいは恋人に発展しそうで、将来
の結婚相手にと考えているのか」
創 :「何故、そんなことを?」
美沙:「と、いう質問が返ってくるところをみると、芳野の気持ちはかなり進んでいるみた
いね」
創 :「・・・・」
美沙:「ま、いいや。芳野も大人だからね。でも、君のお父さんや彼女のお母さんの二の
舞にはならないことを祈るわ。この先、ふたりの関係がどう発展していくかわから
ないけれど、どんな時でも彼女を守れるって自身がある?」
創 :「そんなに深刻なことなのですか?俺は彼女を悲しませないつもりだけど」
美沙:「芳野の気持ちはわかったわ。だけど、彼女はこの間までは高校生だったんだから
ね。その辺のところをよく考えて行動するようにね」
創は美沙の言葉を神妙な面持ちで聞いていた。
美沙:「ところで、芳野のお祖父さんはどんな会社に勤めていたの?」
創 :「地方銀行だけど。それが何か?」
美沙:「銀行か・・・」
創 :「お祖父さんが何か?」
美沙:「実はね、芳野のお父さんと静香さんのお母さんは結婚の約束をしていたんだけど、
君のお祖父さんと彼女のお祖父さんの間にのっぴきならないことがおきて、それが
遠因で彼女のお祖父さんが亡くなったということらしい。つまり、愛しながら泣く泣く
別れたという訳」
そこまで話すと、美沙は自分のカバンからA4版ぐらいの封筒を取り出した。
美沙:「これには、小林秀雄さんと山田綾乃さんに会った時の会話を録音したテープと
遠山誠が出版したエッセイ『赤い海』が入っているわ。これを芳野に渡すから、
自宅に持ち帰って聞いてみて。私が話しをするより、その当時の様子がわかると
思うから。また行き詰ることがあったら相談して」
美沙の含みを残した言い方に、ふたりの前途に暗雲が立ち込めているような不安を感じる
創だった。
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冬の追憶No.25-6
http://jsby.exblog.jp/7295360/
2007-10-30T21:43:00+09:00
2007-11-01T09:44:29+09:00
2007-10-30T21:43:13+09:00
jsby
追憶 冬物語
月曜日の昼下がり、美沙はカレッタ汐留の地下広場にある四角いマーケットパラソルの
下で遅い昼食を取っていた。すでに午後2時をまわり、この界隈のレストランのランチタイム
が終了してしまっていたからだ。『カレッタ汐留』とは汐留電通ビルに併設されたショッピング
モールのこと。その名は幸運を呼ぶ動物とされているアオウミガメの学名『カレッタカレッタ』
に由来する。
彼女は近くのフレンチベーカリーで購入してきたパンと飲み物で昼食を済ませると、午前中
から午後にかけて取材してきたメモに目を通しながら、バッグの中からノート型パソコンを取り出した。自分のデスクに戻ってからまとめてもいいのだが、かかってくる電話に追われ、結局は後回しになってしまうからだ。その時、カラカラと音がして何かが転がり落ちる音がした。
音の正体は小林秀雄や山田綾乃との会話を録音したテープだった。それらを拾い集めている時、山田綾乃の言葉が脳裏に蘇った。
『叶うことのない愛を追い求めるよりも、彼のことなどさっさと忘れて出直した方がいいわ。
就職したら、響子にはもっと素敵な人との出会いが待っているかもしれないわよって、忠告
したのだけど・・・。その時の彼女はそんな私の言葉も耳に入らないほど大きな傷を負って
しまっていたわ。内定していた会社の就職も断ってしまい、卒業式にも出席しなかったくらい
だから』
『彼女は出口の見えない暗いトンネルの中でもがき、彼との楽しかった思い出のページを
1枚々破り捨てていくような心境だったと思うわ。でも最後のページだけには、どうしても破
けなかったのね。それが彼に対する執着なのか愛なのか、私にもわからないけど』
美沙は自分が同じ立場だったら、どうしただろうと思った。きっと、彼の子供は産まなかった
だろうし、父を死に追いやった遠因とやらを究明して彼の父親に謝罪を求めたかもしれない。
しかし、それも他人事だからそう思えるのかもしれないが。
その当時、創の祖父が何処の会社に勤め花村家にどうかかわったのか、過去に遡って調べてみる必要があるかもしれない。美沙にとってはそちらの方が興味深く、いつもの好奇心が
ふつふつと音を立てて湧き上がるのを感じた。
今朝、出社した時に創は『話があるから』の自分の一言を待っているかのように、口実を作っては美沙のまわりをうろついていた。そんな気持ちを察しながらも、彼女はわざとそっけない態度で接した。彼の遠山静香に対する気持ちが何処までのものなのか、確かめないうちは
うかつにテープを渡してしまうわけにはいかないと思ったからだ。
やがて彼女はノート型パソコンをバッグにしまうと、決心したように創の携帯に連絡した。
美沙:「今、社の近くまで戻って来たところだけど、仕事中?」
いつもの快活な美沙らしくない切り出しに、ざわざわとした不安感を覚える創だった。
創 :「いえ、俺もちょっと前にデスクに戻ってきたところです。ひょっとしてこの間、先輩に
頼んだことで何か?」
美沙:「うん、まあ、そうだけど・・・。今日は仕事、何時に終わる?」
創 :「急がなければならないようなものはないから、帰ろうと思えば定時に出られそう
です」
美沙:「そう、じゃあ・・・。隣の汐留タワーの
1階にあるカフェ『エンボリアム』で6時に待ち
合わせするというのはどう?芳野の方が先に
着くようなら、目立たないように奥の席を取っておいてくれる」
創 :「了解いたしました。6時ですね。でも、何だか進路指導の先生に会う前みたいに
ドキドキしてきた。先輩、お手柔らかにお願い
しますね」
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冬の追憶No.25-5
http://jsby.exblog.jp/7072760/
2007-09-28T23:46:00+09:00
2007-09-29T20:58:56+09:00
2007-09-28T23:46:17+09:00
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追憶 冬物語
今回の投稿は「冬の追憶No.25-4~5」の2稿に渡っています。振り返って、ご覧ください。
ふたりが置かれた空間だけにスポットライトが当たり、浮かび上がったステージの上にいる
ような気分だった。美沙はしまったと思った。我が意を得たとばかり、一気に突き進みすぎた。咲きかけた花芽を摘んでしまっては元も子もない。ここで少し間を取って、綾乃が話し始める
までじっと待ったことにした。
やがて綾乃にも心の準備が出来たのか、穏やかな口調になり
綾乃:「私がこれから鈴木さんにお話することは響子には絶対に秘密にしていただけ
ませんか?」
美沙:「わかりました。お約束いたします」
彼女は和光の時計台を見つめながら、
綾乃:「鈴木さんが遠山誠さんの取った行動を不可解に思うのは当然のことだと思います。
私も『赤い海』を読んで、響子が生んだ男の子は芳野千尋さんとの間に出来たお子
さんではないかと思ったくらいです。それに衝撃的な内容だったので、とても気になり
ましたもの。それで、しばらくして響子に連絡を取ったことがあったのです」
美沙:「それで、彼女は何と答えられました?」
綾乃:「私が思ったとおりでした。作ちゃんと名付けられた男の子は芳野千尋さんとの間に
出来たお子さんだそうです。そして、あの本は誠さんが千尋さんに向けて書いたそう
です」
綾乃:「そして意外だったのは、響子の落ち込みようは大変なものでしたが、これでやっと、
誠と本当の家庭が持てるような気がするという言葉が出たことでした。罪深いです
よね」
美沙:「でも、響子さんは遠山誠さんという素晴らしい男性と幸せな結婚をされたのに、
何でわざわざ波風を立てるようなことをしたのでしょうね?」
綾乃:「その原因については、私からはお話することは出来ません。響子のお父さんが
突然に亡くなったのは、自殺だったそうです。その遠因を作ってしまったのは、
芳野千尋さんのお父さんだって言っていました。彼のお父さんって、銀行員だった
そうです」
綾乃:「その遠因が知りたいと思われるのでしたら、彼らの郷里に行って調べられといい
と思います。私もすべての真相を知っている訳ではないので」
綾乃の話が本当だとすると、美沙の推理どおり響子が周囲の反対を押し切ってまで芳野
千尋との間に出来た子供を産んだのは、彼の父に対する復讐の意味もあったのか、また
彼が父の進める見合い結婚をするに当たって交わした交換条件とは何だったのだろうか?
そして、遠山誠が自分の実話に近い話ではないのか、と噂になることを承知で芳野千尋に
向けて『赤い海』を出版したのは何故だろう。彼ら二人にだけしか解らない約束が交わされ
ていたのではないだろうか。美沙の頭の中ではシナプスがめまぐるしく行き交い、深まる謎
への答えを導き出そうとしていた。
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冬の追憶No.25-4
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2007-09-28T23:32:00+09:00
2007-09-29T12:19:47+09:00
2007-09-28T23:32:11+09:00
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追憶 冬物語
最近では、いわゆる『出来ちゃった婚』の占める割合が30%近くにも達しようとしている。
そのせいか周囲の人々も『へーっ、いつの間に』などと苦笑いこそするが、『ふたりが幸せ
であれば』、とあまりマイナスイメージで捉えない傾向にさえある。
しかし、遠山誠や芳野千尋が社会人となった26年前はどうだっただろうか。若すぎる結婚
にお互いの両親も必死で反対しただろうし、友人達からも驚異の目で見られたに違いない。
ましてや遠山誠は卒業当時、定職がないままアルバイトで生計を立てながら響子と結婚をし、父親になったのだから。あったのは、脚本家になりたいという夢と誠実な人柄と自分の
可能性を信じて努力することだけだった。
リストランテ 銀座ポルトファーロ
美沙は山田綾乃から学生時代の遠山誠の話を聞きながら、彼は現在の若者よりも精神的
にはるかに大人であり責任感も強い人物だったのだろうと感じた。綾乃は思ったよりも取材
に協力的で、学生時代の他愛のないことまで話してくれた。
この様子ならば大丈夫と思い、彼女は小林秀雄に見せたのと同じ『赤い海』という本をバッグ
の中から取り出した。
美沙:「これ、遠山誠氏が22年前に自費で出版された本ですが、ご覧になったことが
ありますか?」
急に綾乃の目が輝き、美沙が差し出した本に懐かしそうに手を伸ばした。
綾乃:「あら、この本!私も読みました。これを何処で?よく手に入りましたね。
当然ですよね。雑誌社にお勤めなのですもの」
綾乃から「いいえ、初めてです」と言う返事が帰ってくるとばかり思い込んでいた美沙は勢いを削がれた形になった。彼女は一度用意していた言葉を飲み込み、体制を整え直さなければならなかった。それならば、いっそう話は早い。
美沙:「山田さんこそ、遠山誠氏が書かれた本だとよくわかりましたね。彼はこの本
を出版するにあたり、わざわざ二流の目立たない出版社に原稿を持ち込んで、
しかも冊数限定による自費で出版されたのです。彼ほどのドラマ作家が書き上
げた作品であれば、著名な出版社なら何処でも取り扱ってくれる筈なのに」
美沙:「どうしてそんな不可思議な行動を取ったのでしょうね?それで遠山ご夫妻のこと
を知っていらっしゃるご学友にお聞きしてみようと思ったのです。」
綾乃:「そうでしたか。私もM書店で別の本を探している時に、この本を見つけたのです。
ドラマ作家として活躍し始めた彼が実名で脚本を書いていたことは、響子から聞
いて知っていましたから」
美沙:「すでに、お読みになっているのでしたら、内容はよくご存知のことと思いますが、
この物語は幼い男の子を不運な事故で亡くしてしまった若い父親の苦悩がモチ
ーフとなっています」
美沙:「遠山氏はお子さんを亡くしてから半年後にこの本を出版されています。それで
遠山誠の実話に近い話ではないのか、と噂になったことがあったのです。その
内容ですが、まるで読者の誰かに向けて書いているのではないかと感じられる
節もあったりして、どう思われましたか?」
美沙:「それと、この本のことで響子さんともご連絡を取られましたか?」
今度は、美沙の堰を切ったような説明と質問に圧倒されたのか、綾乃の方がどう答えて
いいものか言葉を失ってしまったようだった。彼女は膝に置かれたナプキンの裾に指を
絡めながら、しばらく沈黙を続けた。それはものの2・3分の時間ではあったが、とても長く
感じられた。
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冬の追憶No.25-3
http://jsby.exblog.jp/6996797/
2007-09-18T21:18:00+09:00
2007-09-19T07:26:21+09:00
2007-09-18T21:18:34+09:00
jsby
追憶 冬物語
今回の投稿は「冬の追憶No.25-2~3」の2稿に渡っています。振り返って、ご覧ください。
美沙:「小林秀雄さんのお話ですと、W大学時代に花村響子さんと親しかったそうですね?」
綾乃:「ええ、ふたりとも同じ学部で演劇サークルに所属していたというだけでなく、私も響子
も地方出身者で似たような環境ということもあって、何となく気が合ったものですから」
美沙:「似たような環境って?」
綾乃:「鈴木さんは東京生まれですか?」
美沙:「そうですが、それが何か?」
綾乃:「私も響子も、二人兄弟の末っ子。私の場合は上が兄、彼女は上がお姉さん。
そしてお互いの兄弟は親元にいて、地元企業に就職しているか実家を手伝っ
ている」
綾乃:「今でこそ地方出身の女の子が大学卒業後、東京の企業に就職をして一人暮らし
を続けるのは何でもない世の中になりましたけれど、私達の頃は男の子ならとも
かく、『都会で女の子が独り暮らしをするのは危ないから』って、親・兄弟が口をそろ
えて『卒業したら郷里に帰って来て、地元企業に就職しては』と説得されました」
綾乃:「それでも、東京に親戚がある人や兄や姉が東京に住んでいる人などは、例外的
に親も認めてはくれましたが」
綾乃:「だから東京に住み続けるためには、大学在学中に東京の一流企業に就職する
ような有望株の男性を見つけるか、寮が完備しているような大企業に就職し、そこ
でいい男性を見つけて結婚するかが、両親を納得させるための一番いい方法だっ
たんです。それくらい東京は魅力的な大都会に思えたのです」
美沙:「それで花村響子さんは、芳野千尋さんや遠山誠さんと親しくなったという訳です
か?」
綾乃:「それだけではないと思うのですが。最初のうちは三人とも郷里も同じだし、演劇や
映画という共通のテーマを通じて、気の置けない仲間として付き合い始めたみたい
でした。そのうち芳野さんの方が響子に積極的にアプローチし、恋人同士のような
付き合いに変わっていったんです」
綾乃:「彼は背が高くってハンサムでかっこよかったし、それに次男ということもあって、
東京の会社に就職すると決めていましたから、彼女が彼に惹かれる気持ちはわ
かりますけど。だから、私も響子を応援してあげたい気持ちで一杯だったんです。
羨ましいとさえ思っていました」
綾乃:「そのままでいけば、ふたりは理想的なカップルとして幸せなスタートを切れる筈だっ
たのに・・・。愛し合っていた二人を切り刻むほどの決定的なことが起きてしまったか
らって、別れてしまったんです。でも彼女は運がいいわ。遠山誠と結婚したんだもの。
美人は特だなと思いました」
美沙は冷静さを装いながらも、『愛し合っていた二人を切り刻むほどの決定的な』言葉に一瞬身構えた。
美沙:「『愛し合っていた二人を切り刻むほどの決定的なこと』って何でしょうか?」
綾乃:「それが響子も言いたがらなかったので、私も詳しい事情は知らないのですが、彼女
のお父さんが突然亡くなったことに彼のお父さんが関係しているのではと噂で聞いた
ことがありました」
美沙:「まるでドラマの世界のお話みたい。人の運命ってわかりませんね。卒業後も、響子
さんとはお付き合いをしているのですか?」
綾乃:「彼女が遠山さんと結婚をして東京に住んでいた頃は時々会っていました。その後、
私も結婚をして埼玉、彼女も鎌倉に引越しをしてしまってからは会っていません」
やはり遠山響子にも自分のことを理解してくれる友がいて、その痕跡を残していたのだった。
美沙:「でも、小林さんのお話だと、そんなことがあったにもかかわらず、芳野さんは商社
に就職した年にお見合い結婚をしてニューヨークに3年間ほど赴任していたそうです。
そのことを彼女は知っていたのですか?」
綾乃:「響子も芳野さんがお見合い結婚したことは、後になって人伝に聞いて知っていたよう
です。でも、彼がニューヨークに3年間も赴任していることは知らなかったみたいです。
私も初耳です」
綾乃:「その結婚を受け入れるのにあたって、彼はお父さんにある交換条件を出したそう
です。『その鍵を握っているのは、私よ』って響子は悲しそうに話していたことがあり
ました」
若しかして、その交換条件が22年前に亡くなった「遠山作」という子供ではないのだろうかと美沙は推測した。そうだとすると、彼女は芳野氏の父に対する復讐のために子供を産み、彼の子供とわかるような名前を付けたことになる。
そして26年間の時が流れ、自分の後輩の芳野創と遠山静香が巡り会うとは、運命とは何と過酷なものなのだろうと美沙は思った。
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冬の追憶No.25-2
http://jsby.exblog.jp/6996679/
2007-09-18T21:03:00+09:00
2007-09-19T07:29:01+09:00
2007-09-18T21:03:19+09:00
jsby
追憶 冬物語
山田綾乃は初めて会った美沙に戸惑いを見せながらも、まるで憧れの映画スターにでも
出会った時のような羨望の眼差しを送ってくる。美沙の方が恥ずかしいくらいだ。それでも
女同士というのは取り留めのない会話を交わしながら、次第と打ち解けてしまうから不思議
なものである。
美沙は山田綾乃を三愛ビルの裏手にある銀座フォリービルのイタリアンレストラン「リストラン
テ ポルトファーロ 銀座本店」へと案内した。エレベーターを9階で降り、アプローチに立った時、綾乃が思わず「わあ~」と溜息を漏らした。
突然に視界がぱあーっと開け、一面ガラス張りの大きな窓の向こうに銀座四丁目の交差点の景色が広がっていたからだ。銀座のシンボル、和光の美しい時計台も目の前にある。
ふと階下へと目をやると、淡いブルーの硝子張りの螺旋階段がある。美沙に従って階段を降りていくと、そこがレストランの入り口となっていた。9階から8階へと通じる螺旋階段は開放感溢れる空間を演出するための吹き抜けの役割を果たしていたのだった。
一歩店内に足を踏み入れると、あのポルトガル北西部の港湾都市ポルトをイメージして作ら
れたのだろうか、紺・ブルー・白で統一されエレガントで優雅な雰囲気を醸し出していた。正面
の壁には、大きな古地図が掛けられている。そして左側の窓一面には銀座の美しい街並みを
眺めながら食事を取れるなど、なんとお洒落な演出を凝らしたレストランなのだろうか。
リストランテ ポルトファーロ 銀座本店(ぐるなび)
美沙がウェイターに自分の名前を告げると、窓際席へと案内してくれた。小林秀雄と待ち合わ
せをした時のように、美沙が予約を入れておいたのだった。綾乃を外の景色を眺められる席
へと誘導すると、彼女は綾乃の希望を聞きながら、手馴れた様子で注文を済ませた。それを
待っていたかのように、
綾乃:「素敵なお店ですね。ここへはちょくちょく、いらっしゃるのですか?」
美沙:「ちょくちょくというほどではないのですけれど・・・。以前、雑誌で『ドラマの撮影で使わ
れたレストラン』という特集を組んだことがあって、取材でここのレストランにも来たこと
があったのです。それ以来プライベートでも、時々利用しています。お気に召していた
だけましたでしょうか?」
綾乃:「ええ、ドラマで使われたレストランでお食事ができるなんて感激です。さすがですね。
私、大学時代に雑誌社で働きたいと思って就職試験を受けたことがあったんですよ。
でも、見事に落ちてしまいましたが」
美沙の説明にもあったとおり、リストランテ ポルトファーロ 銀座本店は、「黒革の手帖」・
「不信の時」・「anego~アネゴ~」など、数々のドラマで使われたことがある。
ちなみに「黒革の手帖」では、原口元子(米倉涼子さん)が岩村叡子(山本陽子さん)と話を
した後、レジで山田波子を助けるシーンとして、そして「不信の時」では野上マチ子(松下由樹
さん)がお茶を飲むシーンで、また「anego~アネゴ~」では沢木絵里子(ともさかりえさん)
が黒沢明彦(赤西仁さん)に相談を持ちかけるレストランとして使われました。
綾乃の心象はまずまずのようである。大学時代の話が出たところで、このあたりから話の本題に入ってはと、美沙は心のゴングを鳴らした。そしてジャケットの内ポケットに忍ばせてあったテープレコーダーの電源を入れた。
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冬の追憶No.25-1
http://jsby.exblog.jp/6900023/
2007-09-06T21:05:00+09:00
2007-09-15T06:50:44+09:00
2007-09-06T21:05:27+09:00
jsby
追憶 冬物語
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「第8話」のタイトルを何と付けようか、といくつかの候補の中で迷った挙句、「綻び(ほころび)」とすることといたしました。動詞の「綻びる」を辞書で引くと下記のような使い方があり、
類語としては「解ける」・「切れる」・「咲く」などの意味もありました。
1.縫い目などがほどける。
2.花の蕾が少し開く。咲きかける。
3.表情がやわらぐ。笑顔になる。
4.隠していた事柄や気持ちが隠しきれずに外へ現れる。
5.鳥が鳴く。さえずる。
上記の中で4番目の「隠していた事柄や気持ちが隠しきれずに外へ現れる」が、「第8話」
の内容や雰囲気に合っているのではと判断致しました。これでタイトルも決まりましたので、
本日から「第8話 綻び」をスタートさせたいと思います。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
物事は危ういところから綻び始める。その時は上手く繕ったつもりでも、時間が経つにつれて新たな綻びを呼び込んでしまうようだ。三日後、小林秀雄から美沙の携帯に電話がかかって来た。仕事の時間を外した方がいいのではと小林らしい配慮なのか、美沙が後輩記者の水野遥と昼食を取っているところだった。
汐留シオサイトC地区 日テレタワービルB2階にあるゼロスタ広場にて撮影
小林:「この間はご馳走様でした。ご連絡が遅くなりましたが、水城綾乃さんの連絡先
がわかりましたよ。結婚されて、山田綾乃さんになっていましたけど。旧姓の方
が宝塚の女優さんみたいでよかったのに・・・」
先日のやり取りですっかり打ち解けたようで、話し方にフランクさが感じられる。
小林:「冗談はさておき、貴女と直接話をされた方がいいと思って、鈴木さんの携帯の
番号をお教えしときましたけど、よろしかったですか?今日の午後にでも、ご連絡
するそうです」
美沙:「ええ、常にあちこち移動していますので、携帯にご連絡いただく方がありがたい
です。いろいろとご配慮くださってありがとうございました。また近いうちに、お食事
でもご馳走させていただきますので」
小林:「そう度々、貴女のような女性にご馳走になっては男の沽券に関わる。次は私が
何か美味しいものでも、ご馳走しますよ。それより水城綾乃さん、いや山田綾乃
さんから有益な話が聴けるといいですね」
小林からの好意的な電話が切れて10分ぐらい経った頃だろうか、今度は山田綾乃から
電話がかかってきた。電話の向こうの声は、とても遠慮がちだった。
汐留シオサイトC地区 日テレタワービルB2階にあるゼロスタ広場にて撮影
綾乃:「鈴木美沙さんですか。初めまして、私、山田綾乃と申します。W大学時代の小林
秀雄さんからお話を伺いました。私でお役に立てるかどうかわかりませんが、どう
したらいいでしょうか?」
美沙:「それでしたら、明日は土曜日で私も仕事がありませんので、銀座まででしたら
出て来られるでしょうか?ご無理なようでしたら、日を改めますが」
綾乃:「いえ、大丈夫です。どちらに伺えばよろしいでしょうか?」
美沙:「こちらの勝手ばかり言って申し訳ありません。銀座三愛の1階にあるドトール・
カフェの前で11時半ということでいかがでしょうか?その近くに私が行きつけの
イタリアンレストランがありますので、お食事でも召し上がりながら、お話を伺え
ればと思っています。分かりやすいように、黒のパンツスーツ姿で立っています
ので」
翌日、美沙は待ち合わせの時間よりも早目にドトール・カフェの前に立っていた。さっきから携帯メールのチェックをしていたが、何となく人の視線を感じていた。気が付くと、40代後半ぐらいの小太りの女性が美沙の様子を伺っているようだった。
銀座三愛ビル1階 「ル・カフェドトール銀座店」にて撮影
その女性と目が合った。最初に声を掛けたのは美沙の方だった。
美沙:「ひょっとして、山田綾乃さんですか?」
綾乃:「はい。そうですが、鈴木美沙さんでしょうか?多分、そうじゃないかと思ったの
ですが・・・。待ち合わせの時間よりも10分も早いですし、人違いかもしれないと
思ったものですから。」
こうして、第二段の幕が開いた。「今度はもっと慎重にしなければ、相手は女性だから」再び、美沙の心のゴングが鳴った。
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冬の追憶No.24-31
http://jsby.exblog.jp/6807935/
2007-08-26T15:40:00+09:00
2007-08-27T09:19:36+09:00
2007-08-26T15:40:37+09:00
jsby
追憶 冬物語
むしろここからが記者としての腕の見せ所である。やはり雑誌社ブランドをちらつかせただ
けでは、関心を引き付け続けるのは無理である。少しでも相手に警戒心を抱かせれば、これ
までの努力が水の泡となってしまう。ある程度までは話を引き出せても、そこから先は頭打
ちとなる。小林氏のように社会的地位のある人物なら、なお更のことだ。
これが彼の勤める会社の話題なら、むしろ積極的に話そうという姿勢に変わるのかもしれないが。彼にしてみれば自分自身が語ったことが活字になるかもしれないということを、充分に想定に入れている。一生のうちでインタビューを受けるなどということは、めったにあり得ることではないが、正直なところ煩わしいことには首を突っ込みたくないというのが本音であった。
しかし、こんなこともあろうかと美沙はあるものを用意していたのだった。彼女は職業柄、A4版の書類が入るほどの大きさの手持ちバッグを常に持ち歩いている。その中から、おもむろに書籍らしきものを取り出した。それを膝の上に置きながら、
美沙:「小林さんは彼が書いたドラマをご覧になったことがありますか?」
小林:「いいえ、残念ながら一度も・・・。大学時代の同僚が手がけた作品なら鑑賞して
みたいという気持ちはあっても、正直なところ我々のような世代は連続ドラマが
放映されるゴールデンタイムに自宅でのんびりとテレビを楽しむ時間的な余裕
など、めったにありませんからね。これが小説ならば、通勤途中の車内で読む
ことができるのですが」
美沙:「確かに。ドラマ作家の場合、書き上げた作品は小説家のように活字という媒体を
通して、読者の目に触れる機会などありませんからね。おっしゃることはごもっとも
です。そんな遠山氏ですが、書籍化した作品が一冊だけあるのです。それも冊数
限定による自費出版で」
小林:「ほぉ~」
美沙:「これがその本ですが。」
美沙が自分の膝の上からテーブルの上に置き直したのは新書版ぐらいのサイズの本だった。それには『赤い海』というタイトルが付けられていた。押し寄せる波が赤黒い血のように染まり、なにやらミステリー小説めいたブックカバーがかけられている。
芳野創は美沙にこの本が出版されたことを話していなかったはずなのに、いつの間に用意したのだろう。さすが、入念な準備をしてインタビューに臨む敏腕記者だけのことはある。
小林:「これはミステリー小説かなんかですか?」
美沙が思っていた通り、小林の態度に変化が見られた。
美沙:「いいえ、ミステリーというほどの内容ではないのですけれど、これは遠山誠の実話
に近い話ではないのか、と噂になったことがあったのです。それに彼ほどのドラマ
作家が書き上げた作品であれば、著名な出版社なら何処でも取り扱ってくれる筈
なのに・・・。」
美沙:「わざわざ二流の目立たない出版社に原稿を持ち込んで、しかも冊数限定による
自費で出版するなんて・・・。どうしてそんな不可思議な行動を取ったのだろうと興味
を持ちました。それで遠山ご夫妻のことを知っていらっしゃるご学友にお聞きしてみ
ようと思ったのです。」
美沙:「この物語は幼い男の子を不運な事故で亡くしてしまった若い父親の苦悩がモチー
フとなっています。遠山氏はお子さんを亡くしてから半年後にこの本を出版されて
います。その内容ですが、まるで読者の誰かに向けて書いているのではないかと
感じられる節もあったりして」
美沙の話に興味を示したのか、小林がテーブルの上に置かれた本に手を伸ばした。そして
ぱらぱらと頁をめくり始めた。勿論、手暗がりの中ではその内容を読み取るのは無理であっ
たが。
しばらくして、
小林:「あの~、この本をしばらくお借りする訳にはいきませんでしょうか?」
美沙:「それはちょっと・・・。私も、知人の編集者を通じてお借りしたものなので、申し訳ない
のですが、お貸しする訳にはいかないのです。」
興味を示した小林のために、美沙は触りの部分を紹介した。
美沙:「この本の『若しも・・・神様が消しゴムを使える権利を1度でも与えてくれるのなら、
消してしまいたいことがある。しかし、空白となったところをどう書き直そうとも決して
元のように蘇ることはない。かえって、傷口が広がるだけだ』という書き出しがとても
印象に残りました。」
美沙:「私としては遠山氏の意向を真摯に受け取り、この本を読んで欲しかった人物を見つ
け出してあげたいという衝動に駆り立てれたものですから」
小林:「わかりました。そんな事情なら、田中実の奥さんに頼んで水城綾乃さんの消息を
調べてもらえるように取り計らいましょう」
美沙は万が一のために用意した「赤い海」から展望が開けたことでほっとした。しかし、水城綾乃がもたらす真実が創と静香の前に新たな障壁をもたらしていくことになっていく。
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冬の追憶No.24-30
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2007-08-15T20:58:00+09:00
2007-08-16T16:26:57+09:00
2007-08-15T20:58:57+09:00
jsby
追憶 冬物語
小林はやがて落ち着きを取り戻し、
小林:「もし貴女の推理通りだとしたら、確かに辻褄が合いそうな気がしますな。さすが、
切れ者の記者さんらしい。」
美沙:「さっき小林さんは『彼から名刺を貰ってあったので、懐かしさも手伝って先月会っ
たばかりですよ』とおっしゃっていましたが、その時にはどんなお話をされたので
すか?」
小林:「どんな話って、男だから今の自分が勤めている会社のことや自分が取り組んで
いる仕事のことに始まって、大学時代同期生の近況などに関する話題が多かった
ように思います。そう言えば、芳野に『遠山誠のお墓が何処にあるか知っているか』
って聞かれたな」
美沙:「それで、何て答えられたのですか?」
小林:「『俺も、彼の墓参りには行ったことがないけど、誰かが花村、いや奥さんに尋ねたら、
鎌倉の浄明寺だと言っていたぞ。お前、墓参りに行くのか?』と聞いたら、彼は無言で
頷いていましたよ」
美沙:「だとしたら、芳野氏は遠山誠氏のお墓参りに行って遠山作と名付けられた男の子が
幼い頃に亡くなってしまっていたことにも気付きますよね」
小林:「まあ、そうでしょうな」
美沙:「ところで、W大学第一文学部の同期生の中に田中実さんという男性の方がいらっ
しゃいますか?」
小林:「ああ、いますよ。彼は自動車会社に勤めていますよ。彼には仕事のことで、先週
会ったばかりですよ。それが、何か?」
美沙:「いぇ、2年前にお亡くなりになられた、とお聞きしたものですから」
小林:「誰がそんなデマを!彼なら、元気でピンピンしていますよ」
またしても芳野の嘘が完全に証明されるような結果となった。
美沙:「そうですか・・・」
美沙は何かを考えているような沈黙の後、思い付いたように
美沙:「花村響子さんの大学時代のご友人で、彼女と特に親しかった女性の方を知りませ
んか?」
小林:「親しかった女性の友達ねぇ~」
彼の脳細胞の中で、様々な学友の顔が浮かんでは消えていった。それは、まるでアルバムの頁をめくっているような感じだった。そして、ある頁のところで彼の目が止まった。
小林:「花村は華やかな感じがする女性だったが、実際は物静かで東京出身者の多い第一
文学部の中では、あまり友人がいなかったんじゃないかなあ~。きっと、つい出てしま
う方言を恥ずかしいと思ったのかもしれない。だから、同郷の遠山や芳野といるとほっ
とするのかもしれない。あえて上げると、演劇部の同期生の水城綾乃ぐらいかな。
一緒にいるのを何回か見たことがありますよ」
美沙の目がイルミネーションのように輝き始めた。そして、思わず身を乗り出すように
美沙:「その方の連絡先はわかりますでしょうか?」
小林:「恐らく、彼女も結婚して姓が変わってしまっているだろうからなあ~。あっ、そうだ。
もしかしたら、さっき話題に上った田中実の奥さんだったら、知っているかもしれない。
彼の奥さんもW大学の第一文学部の同期生だったから。田中に連絡して聞いてみま
しょうか?」
美沙:「お願いできますか。さすが、小林さん!交友関係が広いですね」
小林:「その前に、ひとつお伺いしていいですか?」
美沙:「何でしょうか?」
小林の態度から、次に話す言葉を選んでいる様子が感じられた。
小林:「確か、今回のインタビューは遠山誠氏が大学卒業後、彗星のようにドラマ作家として
デビューを果たし、数々の良質なドラマを書き上げることができた足跡を追ってみたい
というのが主旨でしたよね。これまで、お伺いさせていただいたお話からだと、遠山誠・
花村響子・芳野千尋の大学時代のスキャンダルを探るような気がしてならないので
すが・・・」
小林の言葉に美沙は冷やりとした。やはり、一流企業の次長職の地位を務めるだけのことはある。しかし、これからが一番肝心な所に差し掛かる。ここで自分に対する彼の信頼を確固たるものにしておかなければ次はない。それならば、と美沙は次の作戦に出ることにした。
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