2005年 08月 18日
冬の追憶 No.18-3 |
「第3話 恋の讃歌」
ベイサイドマリーナ中央付近には、灯台塔(ライトハウス)と呼ばれる建物があり、レストラン街のシンボルとなっている。創は、その階下にある「CUPS & Co(カップス&カンパニー)」というレストランへと、静香を誘った。
「CUPS & Co(カップス&カンパニー)」
人気のある店のせいか、窓際の席は若いカップルで
一杯だった。二人は、奥のテーブル席へと通される。店内は小ぢんまりとしているが、すべての席から桟橋につながれた船やマリーナを、眺めることができなかなかすてきな店だ。
ウェイターが、メニューを運んでくる。
創 :「何がいい?」
静香:「初めてでよくわからないので、おまかせします。」
創 :「僕も3年前の秋、ベイサイドマリーナがオープンした時に、取材で来て以来
で詳しくはないのだけど・・・。その時、たまたまこの店で休憩したんだ。
『ガレット』というそば粉で作ったクレープがおいいしいらしいよ。
フランスのブルターニュ地方の名物料理なんだって。」
ウェイターが、注文を取りに来る。静香、席を立ち化粧室へと向かう。
創 :「生ハム入りのガレットふたつとサラダ、それにコーヒーをふたつ。」
静香、創からプレゼントされたオルゴールボールネックレスを、身につけ席に戻る。
オフホワイトのセーターに、クラシックなネックレスが映えている。
静香:「あのう~。早速、ネックレス付けてみたんですけど・・。どうでしょうか?」
創、嬉しそうに
創 :「うん、良く似合うよ。静香さんが、付けるとなお良く見える。」
そう言いながら、自分の携帯に付いているオルゴールボールを、振ってみせる。
創 :「ところで、静香さんは○○大学の映画学科を、受験したの?」
静香:「何でそんなこと聞くんですか?」
創 :「芸術系の大学を目指す人って、けっこうとんでいて個性的な人が多いから、
意外な感じがしたんだ。」
静香:「父の影響かもしれません。私の父って、ドラマや映画のシナリオ作家
だったんです。ペンネームは本名と同じ『遠山 誠』です。小さい時から
父の仕事を見ていて、大人になったら、私も映画やドラマ制作の仕事を
してみたいなって思っていたんです。それで受験したんです。
でも、ぜんぜん自信なくって。」
創 :「へーっ。そうだったんだ。でも『シナリオ作家だった』って言ったけど・・・。
今は違うの?」
静香:「いえ、そういう意味じゃなくて。父は2年前、私が高校1年生の時に亡く
なりました。父のお墓は、浄明寺にあるんです。芳野さんと初めてお会い
した時は、お墓参りの帰りだったのです。突然、話し掛けれれてびっくり
したけれど・・・・」
創 :「だけど、どうして僕に会ってくれるの。今さら、こんなこと聞くのは変だけど?」
静香:「私、芳野さんの名前に興味持ったんです。父は大学時代に、ある同僚と
合同でシナリオを書いていたのです。父はその時、「創」というペンネームを
使っていたそうです。」
創 :「それで卒業後、お父さんはどうしたの?」
静香:「父はできれば、ドラマや映画の物語を書くような職業につきたい、と思い
就職活動をしたのですが、なかなか思うようにいかなかったそうです。」
静香:「でも夢を諦められず、ある雑誌社のアルバイトをしながら、シナリオを書き
続けたんです。しばらくして、あるテレビ局に応募したシナリオが認められ、
それが、シナリオ作家としてのスタートになったそうです。」
創 :「それで、その友人はどうしたの?」
静香:「その人は途中で諦めて、在学中に別の会社に就職をしたそうです。その後、
その友人と連絡が取れないって、寂しそうに言ってました。」
静香:「芳野さんの名前が、父が使っていたペンネームと同じ『創』、ただそれだけの
ことなのに・・・。私って変ですよね。不思議な偶然と親近感を感じてしまった
んです。何故か初めて会ったような気がしない。珍しい名前の人ってこの世の
中に一杯いるのに。」
創 :「へえっー、そうだったんだ。だけど俺、創って名前でよかった。得したな~。
両親に感謝しなくちゃ。そうじゃなかったら、変な奴って思われて、相手にも
されてなかったかも。」
創、嬉しそうに笑う。
ベイサイドマリーナ中央付近には、灯台塔(ライトハウス)と呼ばれる建物があり、レストラン街のシンボルとなっている。創は、その階下にある「CUPS & Co(カップス&カンパニー)」というレストランへと、静香を誘った。
「CUPS & Co(カップス&カンパニー)」
人気のある店のせいか、窓際の席は若いカップルで
一杯だった。二人は、奥のテーブル席へと通される。店内は小ぢんまりとしているが、すべての席から桟橋につながれた船やマリーナを、眺めることができなかなかすてきな店だ。
ウェイターが、メニューを運んでくる。
創 :「何がいい?」
静香:「初めてでよくわからないので、おまかせします。」
創 :「僕も3年前の秋、ベイサイドマリーナがオープンした時に、取材で来て以来
で詳しくはないのだけど・・・。その時、たまたまこの店で休憩したんだ。
『ガレット』というそば粉で作ったクレープがおいいしいらしいよ。
フランスのブルターニュ地方の名物料理なんだって。」
ウェイターが、注文を取りに来る。静香、席を立ち化粧室へと向かう。
創 :「生ハム入りのガレットふたつとサラダ、それにコーヒーをふたつ。」
静香、創からプレゼントされたオルゴールボールネックレスを、身につけ席に戻る。
オフホワイトのセーターに、クラシックなネックレスが映えている。
静香:「あのう~。早速、ネックレス付けてみたんですけど・・。どうでしょうか?」
創、嬉しそうに
創 :「うん、良く似合うよ。静香さんが、付けるとなお良く見える。」
そう言いながら、自分の携帯に付いているオルゴールボールを、振ってみせる。
静香:「何でそんなこと聞くんですか?」
創 :「芸術系の大学を目指す人って、けっこうとんでいて個性的な人が多いから、
意外な感じがしたんだ。」
静香:「父の影響かもしれません。私の父って、ドラマや映画のシナリオ作家
だったんです。ペンネームは本名と同じ『遠山 誠』です。小さい時から
父の仕事を見ていて、大人になったら、私も映画やドラマ制作の仕事を
してみたいなって思っていたんです。それで受験したんです。
でも、ぜんぜん自信なくって。」
創 :「へーっ。そうだったんだ。でも『シナリオ作家だった』って言ったけど・・・。
今は違うの?」
静香:「いえ、そういう意味じゃなくて。父は2年前、私が高校1年生の時に亡く
なりました。父のお墓は、浄明寺にあるんです。芳野さんと初めてお会い
した時は、お墓参りの帰りだったのです。突然、話し掛けれれてびっくり
したけれど・・・・」
創 :「だけど、どうして僕に会ってくれるの。今さら、こんなこと聞くのは変だけど?」
静香:「私、芳野さんの名前に興味持ったんです。父は大学時代に、ある同僚と
合同でシナリオを書いていたのです。父はその時、「創」というペンネームを
使っていたそうです。」
静香:「父はできれば、ドラマや映画の物語を書くような職業につきたい、と思い
就職活動をしたのですが、なかなか思うようにいかなかったそうです。」
静香:「でも夢を諦められず、ある雑誌社のアルバイトをしながら、シナリオを書き
続けたんです。しばらくして、あるテレビ局に応募したシナリオが認められ、
それが、シナリオ作家としてのスタートになったそうです。」
創 :「それで、その友人はどうしたの?」
静香:「その人は途中で諦めて、在学中に別の会社に就職をしたそうです。その後、
その友人と連絡が取れないって、寂しそうに言ってました。」
静香:「芳野さんの名前が、父が使っていたペンネームと同じ『創』、ただそれだけの
ことなのに・・・。私って変ですよね。不思議な偶然と親近感を感じてしまった
んです。何故か初めて会ったような気がしない。珍しい名前の人ってこの世の
中に一杯いるのに。」
創 :「へえっー、そうだったんだ。だけど俺、創って名前でよかった。得したな~。
両親に感謝しなくちゃ。そうじゃなかったら、変な奴って思われて、相手にも
されてなかったかも。」
創、嬉しそうに笑う。
by jsby
| 2005-08-18 17:09
| 追憶 冬物語