2006年 02月 03日
冬の追憶No.22-17 |
「第5話 迷路」
「第5話 迷路」は登場人物をめぐり心の緊張状態が続く章です。過去における負の遺産が清算されないまま、出口を求めてさ迷い続ける主人公たちの苦悩が描かれていきます。
今回の投稿では、その箸休めとして小林家の卒業式シーンを差し挟んでみました。また物語のムードメーカーとして、「雨漏り書斎」のamamori120氏のご了承を得た上で、小林家の
良き隣人役として友情出演していただきました。
3月3日卒業式、穏やかですがすがしい朝を迎えた。大町一丁目に住む小林家でも遠山家
同様、卒業式の朝らしい光景が繰り広げられていた。千晶の母は、長年お茶を習っていて
着物を着慣れているはずだった。
しかし娘の卒業式のために着る晴れ着となると、特別な感慨があるのか、あれやこれやと
迷ってばかりでなかなか決まらないでいる。彼女の名前は小林博美。その娘である千晶は
2人兄弟の末っ子、上には大学生の兄がいる。
鎌倉駅周辺地図
鎌倉市観光協会ホームページ
博美:「ねえ千晶、このクリーム色の着物にはどの帯が
合うかしら?」
千晶:「もう~母さんたら、今日の主役はわたしなのに。
誰も母さんの着物なんて気をつけて見てないから
大丈夫よ」
博美:「全く、貴女って子はつれないわね。昨夜、遠山さん
のお母さんにご連絡したら,静香さんに着物に合う
帯を選んでもらったって、おっしゃつていたわよ」
少しすねたように、
千晶:「静香は優しいからね」
千晶の母は少々不満そうにしながらも着付けをすませると、
博美:「学校に登校する前に、お隣の雨漏りさんのお宅に一緒にご挨拶に行ってね。
お赤飯を炊いたのでお持ちしたいの。それに遠山さん宅にお持たせする和菓子
のことも、ご相談したいので」
小林家と雨漏り家はお隣同士ということもあって、家族ぐるみで長年お付き合いしてきた
間柄だ。上が兄の千晶は小さい頃から、雨漏り家の姉妹2人によく遊んでもらった。その娘
さん達も他家へと嫁ぎ、現在はご夫婦ふたりだけの生活を楽しんでいる。雨漏り夫妻も、
千晶のことを歳の離れた娘のようにかわいがってくれている。
雨漏り氏の趣味は読書と日本国中の甘い物研究。生き字引的な存在で、小林夫妻も何か
わからないことがあると相談をし、すっかり頼りにしてしまっている。特に博美はお茶の先生
や知人宅へのお持たせのこととなると、真っ先に雨漏り氏に相談を持ちかけてきた。何処の
お店の何がおいしいか、差し上げる人の好みに従って的確にアドバイスしてもらえれるからだ。

博美と千晶は、隣家の雨漏り家へと向かった
博美:「おはようございます」
雨漏り氏:「おや、朝早くからすてきな着物をお召しになって、おふたりそろってお出かけ
ですか?いや実に綺麗ですよ。女性の着物姿はいつ見てもいいですな」
パック詰めしたお赤飯を差し出しながら、
博美:「恥ずかしいので、あまり褒めないでくださいね。いえ、出かけるというほどではない
のですが、今日は千晶の卒業式なのです。それで、この子のお祝いにとお赤飯を
炊いたので、少しだけですがお裾わけです」

雨漏り氏&家人Tさんの似顔絵
※今回の卒業式シーンでは、「雨漏り書斎」のamamori120さんに小林家のよき隣人として
友情出演していただきました。
雨漏り氏が感慨深げに、
雨漏り氏:「それで着物を。いや、ごちそうさまです。千晶ちゃんのお母さんが炊いた
お赤飯は特別おいいしからな。そうか千晶ちゃんも、大学生か。この間まで、
おじさんにおんぶされたり抱っこされたりしていた子がね~。ところで何処
の大学に行くことになったの?」
千晶:「K大学です」
雨漏り氏:「そりゃすごい!おめでとう。千晶ちゃんのお母さんも、これでひと息つきますな。
優秀なお子さんを持って、お幸せだ。よかった、よかった。おじさんも嬉しいよ」
博美:「それと、ご相談なのですが・・・。この子、今晩から3日間、同級生の家に泊まりがけ
で遊びに行くことになっているのです。それで先様に何か手土産に和菓子でも持たせ
ようと思っているのですが、いつものように何か気の利いたものを教えていただけない
でしょうか?」
博美:「卒業式が終わったら、すぐに鎌倉プリンスホテルで謝恩会をすませ、その後すぐに
出かけることになるので、あまり遠くには行けないのですが」
そこへ奥から、雨漏り氏の奥さんのTが出て来た。2階で洗濯物を干していたらしく、博美が来たことに気付かなかった様子だった。
雨漏り氏:「あのね、小林さんの奥さんからお赤飯のお裾わけをいただいたよ。千晶ちゃん、
今日卒業式なんだって」
家人T:「貴方、そういうことでしたら、ちょっと呼んでくださればいいのに・・・。気が付か
ないで、ごめんなさい。ご馳走様です。奥様の炊いたお赤飯、何処かのお店の
みたいにおいしいですものね。雨漏りの大好物なんですよ。それと遅ればせ
ながら、おめでとうございます」
家人T:「すてきなお着物ですね。奥様、お茶のお手前で着物を着慣れていらっしゃるから、
着こなしもお上手だわ」
雨漏り氏:「ところでさっきの話なんだが・・・近場だったら、鎌倉五郎本店の『栗どら焼き・
ひとひら桜餅・麦田餅』なんかどうかな~。日持ちしたいものだったら『鎌倉半月
か花かまくら』と言ったところかな」

鎌倉五郎本店
甘いものは、人の心を和やかにさせてくれる。あれこれ想像するだけでも楽しい。4人はしばしお菓子談義で盛り上げっていた。春を告げるかのように、何処か遠くから鶯の泣き声が聞
こえて来た。
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「第5話 迷路」は登場人物をめぐり心の緊張状態が続く章です。過去における負の遺産が清算されないまま、出口を求めてさ迷い続ける主人公たちの苦悩が描かれていきます。
今回の投稿では、その箸休めとして小林家の卒業式シーンを差し挟んでみました。また物語のムードメーカーとして、「雨漏り書斎」のamamori120氏のご了承を得た上で、小林家の
良き隣人役として友情出演していただきました。
3月3日卒業式、穏やかですがすがしい朝を迎えた。大町一丁目に住む小林家でも遠山家
同様、卒業式の朝らしい光景が繰り広げられていた。千晶の母は、長年お茶を習っていて
着物を着慣れているはずだった。
しかし娘の卒業式のために着る晴れ着となると、特別な感慨があるのか、あれやこれやと
迷ってばかりでなかなか決まらないでいる。彼女の名前は小林博美。その娘である千晶は
2人兄弟の末っ子、上には大学生の兄がいる。
鎌倉駅周辺地図
鎌倉市観光協会ホームページ

合うかしら?」
千晶:「もう~母さんたら、今日の主役はわたしなのに。
誰も母さんの着物なんて気をつけて見てないから
大丈夫よ」
博美:「全く、貴女って子はつれないわね。昨夜、遠山さん
のお母さんにご連絡したら,静香さんに着物に合う
帯を選んでもらったって、おっしゃつていたわよ」
少しすねたように、
千晶:「静香は優しいからね」
千晶の母は少々不満そうにしながらも着付けをすませると、
博美:「学校に登校する前に、お隣の雨漏りさんのお宅に一緒にご挨拶に行ってね。
お赤飯を炊いたのでお持ちしたいの。それに遠山さん宅にお持たせする和菓子
のことも、ご相談したいので」
小林家と雨漏り家はお隣同士ということもあって、家族ぐるみで長年お付き合いしてきた
間柄だ。上が兄の千晶は小さい頃から、雨漏り家の姉妹2人によく遊んでもらった。その娘
さん達も他家へと嫁ぎ、現在はご夫婦ふたりだけの生活を楽しんでいる。雨漏り夫妻も、
千晶のことを歳の離れた娘のようにかわいがってくれている。
雨漏り氏の趣味は読書と日本国中の甘い物研究。生き字引的な存在で、小林夫妻も何か
わからないことがあると相談をし、すっかり頼りにしてしまっている。特に博美はお茶の先生
や知人宅へのお持たせのこととなると、真っ先に雨漏り氏に相談を持ちかけてきた。何処の
お店の何がおいしいか、差し上げる人の好みに従って的確にアドバイスしてもらえれるからだ。

博美:「おはようございます」
雨漏り氏:「おや、朝早くからすてきな着物をお召しになって、おふたりそろってお出かけ
ですか?いや実に綺麗ですよ。女性の着物姿はいつ見てもいいですな」
パック詰めしたお赤飯を差し出しながら、
博美:「恥ずかしいので、あまり褒めないでくださいね。いえ、出かけるというほどではない
のですが、今日は千晶の卒業式なのです。それで、この子のお祝いにとお赤飯を
炊いたので、少しだけですがお裾わけです」

雨漏り氏&家人Tさんの似顔絵
※今回の卒業式シーンでは、「雨漏り書斎」のamamori120さんに小林家のよき隣人として
友情出演していただきました。
雨漏り氏が感慨深げに、
雨漏り氏:「それで着物を。いや、ごちそうさまです。千晶ちゃんのお母さんが炊いた
お赤飯は特別おいいしからな。そうか千晶ちゃんも、大学生か。この間まで、
おじさんにおんぶされたり抱っこされたりしていた子がね~。ところで何処
の大学に行くことになったの?」
千晶:「K大学です」
雨漏り氏:「そりゃすごい!おめでとう。千晶ちゃんのお母さんも、これでひと息つきますな。
優秀なお子さんを持って、お幸せだ。よかった、よかった。おじさんも嬉しいよ」
博美:「それと、ご相談なのですが・・・。この子、今晩から3日間、同級生の家に泊まりがけ
で遊びに行くことになっているのです。それで先様に何か手土産に和菓子でも持たせ
ようと思っているのですが、いつものように何か気の利いたものを教えていただけない
でしょうか?」
博美:「卒業式が終わったら、すぐに鎌倉プリンスホテルで謝恩会をすませ、その後すぐに
出かけることになるので、あまり遠くには行けないのですが」
そこへ奥から、雨漏り氏の奥さんのTが出て来た。2階で洗濯物を干していたらしく、博美が来たことに気付かなかった様子だった。
雨漏り氏:「あのね、小林さんの奥さんからお赤飯のお裾わけをいただいたよ。千晶ちゃん、
今日卒業式なんだって」
家人T:「貴方、そういうことでしたら、ちょっと呼んでくださればいいのに・・・。気が付か
ないで、ごめんなさい。ご馳走様です。奥様の炊いたお赤飯、何処かのお店の
みたいにおいしいですものね。雨漏りの大好物なんですよ。それと遅ればせ
ながら、おめでとうございます」
家人T:「すてきなお着物ですね。奥様、お茶のお手前で着物を着慣れていらっしゃるから、
着こなしもお上手だわ」
雨漏り氏:「ところでさっきの話なんだが・・・近場だったら、鎌倉五郎本店の『栗どら焼き・
ひとひら桜餅・麦田餅』なんかどうかな~。日持ちしたいものだったら『鎌倉半月
か花かまくら』と言ったところかな」

鎌倉五郎本店
甘いものは、人の心を和やかにさせてくれる。あれこれ想像するだけでも楽しい。4人はしばしお菓子談義で盛り上げっていた。春を告げるかのように、何処か遠くから鶯の泣き声が聞
こえて来た。

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by jsby
| 2006-02-03 23:31
| 追憶 冬物語